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俺は真っ白な世界をただ歩いていた。
ここが“あの世”な事は分かっていた。
俺は、車にひかれて死んだのだ。
一緒にいた由梨がここにいないという事は、助かったのだろう。
その事に、ひとまず安堵していた。
しばらく歩いていると、黒い大きな門が目の前に立ちはだかった。
門の前にはひとりの男がいた。
「ここは、黄泉の国の門。私は、導き手。あなたは、転生か霊体か選択できる。転生ならばこの門をくぐり生まれ変わり、霊体ならばいわゆる幽霊になって現世を彷徨うことになる」
男はすらすらと、慣れた口調でそう言った。
俺がまず思ったのは、由梨の事だった。
会いたい。
俺はそう思った。と同時に、
「霊体になる」
と選択していた。
――かくして、幽霊、はじめました。
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