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「ご臨終です」
医師が遺族に向かって報告して頭を下げる……。
壁からスーッと現れる黒いスーツの男が亡くなった男に話しかける。
(迎えに来ましたよ、さあて行きますかぁぁ〜〜)
(チョット待って下さい、もう少し余韻に浸らせて下さいよ)
男は不機嫌そうに呟く。
(イヤイヤ、こちらも猫の手も借りたいぐらい忙しいんです。この後すぐに北海道の佐藤さんの魂を導かなきゃならないし)
(え? 猫の手も借りたいなんて、死神さんてそんなに忙しい職業なんですか。なんかイメージ違うなぁーー。それに悪魔みたいな格好をしてないし)
彼はチョット不機嫌な顔をして答える。
(皆さん誤解なさってますけど、死神は悪魔じゃなくて『神様』ですからね霊界のジャンルとしては。悪魔とか天使とかの下級霊と一緒にしないでくださいね)
(失礼しました、おっしゃる通りですね。考えてみれば死者を導く大事な先導者ですものねぇ)
彼の意見に同意した事で機嫌を直したようだ。
(そうですよ。神様って名前に入っているのに悪魔だと勘違いしてる人多くて困ります。それに死神は他の神様とは違って、チョット特殊な職業ですからね……。時間優先なんですよ。普通の神様は願い事を叶えるかどうかは神様のペースで出来ますけど、死神は死者のペースに合わせなければいけないのでね)
(なるほど、確かにそうですね。他の神様と違って積極的に行動する神様なんですね)
(それともう一つ違うのは、人間と意思疎通が取れる神様である事です。本の神様やハガネの神様に迎えに来られても、困るでしょ? 皆さん初めて死ぬわけで経験者ではないでしょうし……)
(神様に突っ込んで良いのだろうか? でも確かに学問の神様に迎えに来られても困るなぁ。ここはやはり死神さんに来て欲しいですね)
彼は右手を差し出して、さあ行こうと誘って来る。
(じゃあ、納得して下さったという事でさっさと行きましょうか?)
(そんなに忙しいのなら死神を増やせば良いんじゃないですか?)
コレは意外、といったそぶりを見せる彼。
(それがねぇー、やりたがる神様少ないんですよ。求人募集してるんですけど、ほら時間優先で忙しいブラックな職業なんでねぇ)
(あのー。私で良ければやりますよ、死神……。だって一応神様になれるという事ですよね)
(え! マジすか。そうそう、神様の特権全部ついて来ますよ。いゃあ嬉しいなぁ。神様なんて簡単にはなれませんけど、神様が推薦すれば大丈夫ですからね。それじゃあ推薦状書くんで、そのあいだ遺族との別れの時間を過ごしてて下さいね! 良かったコレで久しぶりに休みが取れる)
そうやって、さっき死んだ彼は800万と一番めの新しい神様を始めることになったのです。
ただし死神ではありますが……。
めでたしめでたし。
了
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