神界美食武闘会

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 店主はもう一度タバコをゆっくりと吸った。  ― ふうー ―  そうすると、今度はハートマークの弧を描き出した。 「日本の究極の食材、“イクラ”で勝負を挑んだんだ。今の季節しか味わえない至高の宝石。白ワインを隠し味にして、豊潤な香りを楽しめるイクラのカリフォルニアロールを創作した」 「それで……結果はどうだったんですか?」 「負けた、1回戦負けだ」 「……相手の料理は?」 「ラーメンだ」 「ラーメン?」 「そうだ、私が間違っていた。食材の鮮度と、奇をてらった献立で勝負を意識しすぎていたんだ。重要なことはそんなことではなかった。大切なのは、食べる人のことを考えた愛、そしてそれを表現できるだけの技術力。そんな基礎的なこともわかっていなかった」 「おそらく師匠もそれには気づいていたかもしれない、そこで私にそれを気づかせるきっかけを作ってくれたんだと思う」 「……それと今のこの状態に何の関係があるっていうんでしょうか?」  京太郎はつっこまざるをえなかった、邪美はすでに鼻ちょうちんを出している。 「私は考えたんだ、私が果たせなかった夢、美食武闘会の優勝。それを実現できるドリームチームを作ろうと。それができるメンバー探しをするため、ラーメン屋を始めた」 「それで俺達が選ばれたということ?」 「そうだ、ラーメンの宇宙、愛、それに気づく創作者を集めるのが、今回の目的だった」 「私達はこれからどうすればよいのでしょう?」 「修行の旅に出ることになる、様々な試練が待っている。それを乗り越えることができるかどうかは、君ら次第だ」  いや、別に関わりたくも、乗り越えたくもない……と一同は思っていた。 次のお話↓ https://estar.jp/novels/25704697/viewer?page=3
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