哀の芽

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哀の芽

https://estar.jp/novels/25695236/viewer?page=8 ↑前のお話 Brother, brother, brother There's far too many of you dying Please do something 兄弟、兄弟、兄弟 死んでいる人が多すぎます…… (どうにかして)  そう歌いながら、一人の男が歩いてきた。 ―なると大王だ。 「よいか? 一言に愛と言っても、そこには色々な意味が含まれている。(あい)(あい)(あい)(あい)(あい)、これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛だ」 「君達には今道しるべがなくなっている。さあ、選びなさい、まずはどの愛から選びますか?」 「どれと言われても……何か食いもんがあるところなら、どこでもいい」  邪美はひとりボソッと話しかけた。 「そうですか……あなた達に今足りないのは(あい)です。快楽に溺れ、(あい)にばかり集おうとしている。一度不幸の底に落ちる経験をしてみてもいいかもしれません」 「不幸の底って、どんな?」 「この物語を終わらせてしまうことです」  そう言うと、なると大王は、ザアっとラーメンの器を振り下ろし、すべての具材を地面にぶちまけた。 「ああ! もったいない!」  邪美は慌てて、具材の元に駆け寄る。悲しみのあまり、一筋の涙が垂れた。  涙が具材の上にポトリと落ちると、そこから小さな芽はひとつ生まれた。 「それはあなた方の(あい)が生み出した世界の芽です。それをしっかりと育てていきなさい。やがてそれは、たくさんの葉をつけ、綺麗な花を咲かせることでしょう」  そう言うと、なると大王の後ろに大きな星雲が広がり、辺りは銀河に包まれた。 「さあ、次の旅を続けなさい。芽を育てるもよし。この銀河の向こうのまだ見ぬ世界を旅するもよし。すべてはあなた方の選択にかかっている……本当の愛を探しに行きなさい」  やがて、なると大王に(かすみ)がかかり、おぼろげな霧は闇夜(?)に消えていった。  そこには、一切れの鳴門が残されていた。 ↓次のお話 https://estar.jp/novels/25713097/viewer?page=1 桜井清志氏が新登場!
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