少女散文

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「石鹸」 私は石鹸の香りが好きだ。 少し粉っぽく、透き通った懐かしい香り。固形石鹸のまるみのある香りや紙石鹸の触れたら溶けていくような繊細さが好きだったし、コインランドリーの前を通ったときのふわっとした香りはほんのり胸を揺らめかせる。 図書館で合う彼女。色白でそこだけ別世界のような雰囲気を纏っていた。少女小説をよく読んでいる。私と同じ。 揺れる心、うっすらと甘い小さなどきどき。 本を取ろうとすると手がかすかにふれあった。 「ごめんなさい」 それだけ言って彼女はふわりと去っていく。 静かに胸がざわざわとする。 かすかに石鹸の香りがした。
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