1人が本棚に入れています
本棚に追加
「パフェ」 切ない甘さ編
パフェはまるで何層にも重なり合った感情のようだ。
「私、絵の勉強をしたくて、ずっと憧れの学校があるの。もし受かったら県外に通うことになるんだけど…」
そう目の前の彼女は言う。いつかこんな日がくると思っていた。
離れたくない、夢を追ってほしい、そもそも引き止める資格は私にはない。
「そうなんだ、応援してる!」
やっと一声絞り出す。まるで自分が空っぽになったような感覚の中、ただ時間がすぎていく。
夏の昼下がりの中、パフェが静かに溶けていった。
「パフェ」 幸せの甘さ編
「私たちつきあおっか」
昼下がりの喫茶店の中そっとアイスクリームをひと匙掬うと、まるで呼吸をするように彼女は言った。
「考えたんだけどあなたと一緒にいるのが一番楽しいの。たぶん、これから先もあなた以上の人は現れないなって。だから、誰よりもずっと一緒にいたいなって」
静かに目と目が合う。
当たり前のように毎日一緒にいた。これから先もそうだと根拠のない夢を見ていた。突然のことに心が揺らぎつつも、その提案はまるで秘密の共有関係のようでどきどきとした。
幾重にも重なった思いが広がるように、パフェが静かに溶けていった。
最初のコメントを投稿しよう!