背徳の行く末

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” 圧倒的背徳感 ” それは愛くるしい彼女を見る度に、包まれる感情。 「 お兄ちゃん、何してるの? 」 俺に無防備に近付く彼女。だけどその正体は、実の妹。 くりっとしたその二重が、艶やかなその唇が、俺を惑わす最低最悪な材料になっていることをきっとお前はまだ知らない。その全てが詰まったような彼女は俺の気持ちも露知らず、ソファに座って俺の肩に頭を乗せた。 「 …何でもねぇよ。」 俺は焦ったように急いで視線を外すだけ。 いつからだろう、妹のお前をひとりの女として見始めたは。いつからだろう、妹のお前に本気で恋心を抱いてしまったのは。 こいつがまだ夜泣きの酷い赤ちゃんだった頃も、ヨチヨチ歩きで笑っていた頃も、思い出すのが嫌なくらい鮮明に記憶していて。 だけど目の前にいる彼女は、そんな思い出を吹き飛ばしてしまうくらいに美しく、制服に身を包み一人の女性として輝いていた。 そんな彼女と一つ屋根の下、いくら実の兄貴だからといって溢れ出す感情を押さえつける事なんて到底出来なくて。 「 お兄ちゃん大好きだよ! 」 愛する妹がそう言ってくれる度に胸が締め付けられる。彼女にとっての愛は家族としての愛情で、そこには何ら偽りのない絆が含まれていて。 だからこそ降り注ぐのは罪悪感。 ごめんな、どうしようもない兄貴で本当にごめん。 「 俺も、.....誰よりもお前のことが大事だか ら。」 大好きだなんて口が裂けても言えなくて。 この気持ちをそっと隠して、俺はいつまでもお前の笑顔を守ろうと心に誓う。生涯愛しているのは妹のお前だけなんだ。だから神様お願いします。もう少し、もう少しだけでいいから、こいつと一緒に居させて下さい。いつか迎える結婚式の日は笑って君を送り出すからさ。 ___数年後。優しそうな男を隣に連れて、真っ白いウェディングドレスを着た彼女は、俺が今まで見たどの女よりも美しかった。 胸に閉まったはずのどす黒い感情が俺に襲いかかろうとするから、必死に必死に抑えこんで、そして彼女に言ったんだ。「おめでとう」ってその餞の言葉を。 いつか区切りをつけたら、その時に言おうと思う。 「 俺もお前のことが、大好きだよ。 」 ずっとずっと愛しているよ、ってね。
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