ずっと癒えない渇き

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 何か言っている声のようなモノが聞こえた。  けれど、この雨だ。  何を言っているかなんて聴き取れない。そうに決まってる。  オレの耳にはただこの雨音だけが邪魔をしてくる。  自分の家ならあと二分くらい全力で走れば辿り着くくらいの距離だ。  これでも体力には自信がある。  ――少なくとも、ミズホに追いつかれることはないはずだ。  要するに、オレは逃げた。  また、逃げ出した。  走って、走って。  逃げて、逃げて。  そうして辿り着いた自分の部屋で、オレは泣いた。  
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