ずっと止まない雨

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 心のどこかでは納得してなかったけれど、話全体の流れとしては理解はできることだった。  この話を切り出したのは彼だったことは予想していなくて、それゆえに不満のようなものがおなかの中に残っているような気分だった。  寂しい。  やるせない。  後悔のような気持ちが泉のように湧き上がってくるのがわかる。  でも心の何処かで、そんな泉の口に石を詰め込もうとしているのも確かだった。  自分の気持ちを誤魔化すために新しい気持ちを作り出そうとしたことは、やはり甘かったのかもしれない。  少しだけ空を見上げる。  にわか雨は止む素振りを見せない。  ただひたすらにアタシの髪を濡らし、頬を濡らし、心を濡らしていく。  湿り気を覚えた心はそれでも直ぐさま乾いていくけれど、雨は性懲りもなく私を濡らし続けていた。 「なん、なのよ……」  恨み言を吐き捨てても、湿度の高い空気とにわか雨はそれを天高くに届けてくれない。  濡れそぼったそれは浮かび上がることもなければ、空中を滑るように走って行くこともない。 「……はぁ」  ため息を漏らしても、重力を受けて濡れそぼった地面に吸い込まれていくだけだった。 「忘れたかったんだけどな……」
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