優等生と劣等生

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そう言うと莉乃が言葉に詰まった。 ちょっと意地悪かもしれないけど、こうでもしないと莉乃は言う事を聞かない。 『なんで……?私と一緒に居たくない……?』 「そんな事ないよ。莉乃と一緒にいるの楽しいよ。でも私は莉乃を私と同じようにしたくないの。学校まで巻き込んじゃったし……」 『私が行きたいと思ったから学校選んだんだよ!叶絵のせいじゃない!!』 「莉乃は来ちゃダメな学校なんだよ。……莉乃とは違う人種がたくさんいるんだから」 『そんなのわかんないじゃん!!』 「莉乃は本当に、いい子だね」 服をギュッと掴んで俯く。 私も莉乃みたいになりたかった。 絵本の中のお姫様みたいな女の子。 「莉乃。お願いがあるの」 『お願い?』 「莉乃には、家にいてお母さんを守ってほしい」 『え?』 「お母さんの味方でいてあげてほしい。私は側に居ないから、お母さんの味方だけど何かあっても守れないから。こんなの莉乃にしか頼めないから」 『でも……』 「お願い、お姉ちゃん」 そう言うと莉乃が電話の向こうで唸った。 それから息をついた。 『分かった……。叶絵と一緒に住むの、諦める』 「ありがとう」 『でも、泊めてって言ったら泊めてね。遊びにも行かせてね』 「いいよ」 『じゃあ、許す』 明るい莉乃の声に救われる。 こうやって言う事聞いてくれる所が優等生なんだよ、莉乃。 私は全然違うでしょ。 莉乃との会話を終えてスマホをポケットに入れる。 すると今度はスマホにLINEの通知の音が。 ため息をついて取り出すと、郁人からだった。 『大丈夫?』 それだけが書かれている。 こうやって電話してこない所、本当に王子。 郁人って優しいな。 ふわふわしてるのに、こういう所はしっかり分かってる。 私は『大丈夫』と返事をしてスマホを直した。 適当に買い物を済ましてマンションに戻る。 買ってきたものを整理していく。 もう、好きにしていいんだ。 そう考えたら気分が楽だった。 .
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