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永草くんは私を降ろそうとして、やめた。
「永草くん?」
声をかけるとそのまま歩き出した。
「叶絵ちゃんはこのまま病院に行こう」
「あ……」
そういえば凄く体がだるかったんだ。
道宮さんに櫂を好きか聞かれて少し忘れていた。
桜と真音ちゃん、そして泉那くんと合流して永草くんは私を降ろした。
「叶絵ちゃんの事、病院に連れて行って。先生には俺から言っとく」
「了解!」
永草くんはいつものようにふわっと微笑むとそのままグラウンドへ戻って行った。
私の荷物は郁人が持って来てくれて、桜に渡してくれた。
真音ちゃんが呼んでくれたタクシーに乗って病院へ向かう。
桜は感激したように口を開いた。
「それにしても、凛と叶絵めっちゃ絵面綺麗だったー」
「え?」
「見てる人達騒いでたもんね!『本物の王子様とお姫様だ!』って!」
そんな事言われてたのか……。
恥ずかしいんだけど。
「あんなに楽しそうにゴールした人って居ないんじゃない?」
真音ちゃんはそう言うと「ふふっ」と笑った。
病院に着くと私は診察室へ通された。
レントゲンなどを撮ってもらって、体に異常がないか検査してもらう。
重いもので殴られた、と伝えると少し深刻そうな表情をされた。
「今の所、脳に異常はありません。ただ、頭を殴られたのであれば少し様子を見た方がいいでしょう。何事もなければ体のだるさも無くなると思います」
「分かりました」
「今日は早めに休んでください。それから、学校へ行くのもしばらくお休みしてください。一週間ほど自宅で様子を見るように。診断書書いておきますね」
先生に頭を下げて診察室を出る。
心配そうな3人に先生から言われた事を伝えた。
「だから早く病院行こうって言ったじゃん!!」
「桜、ここ病院。大声出さないの」
「だけど真音……っ!」
「言いたい事は分かるけど、叶絵ちゃんのお願いを聞いたのは凛達でしょ?それに、叶絵ちゃんだって体育祭頑張りたかったみたいだし。今の所何も無いならそれでいいじゃん」
「そうだけど……」
「とにかく、今は叶絵ちゃんは安静にすること。バイトも当然ダメだからね」
真音ちゃんはそう言うと微笑んだ。
「家まで送ろうか?」
泉那くんが心配そうに言ってくれる。
私は首を左右に振った。
「大丈夫。そこまでしてもらうのは流石に気が引けるから、自分で帰れる」
「倒れたりしない?」
「うん。心配してくれてありがとう、泉那くん」
そう言うと泉那くんは何かを言いかけて口をつぐんだ。
私はタクシーを拾ってマンションへ帰った。
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