体育祭

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「莉乃と郁人は?」 「二人とも買い物行ってる。晩飯作る元気ないから買ってくるって。叶絵は食べれそう?」 「ちょっと頭痛いから自分で適当に作る」 「あんま動くな。俺が作るから」 「悪いからいいよ」 「なんで悪いの?俺、叶絵の彼氏じゃないの?」 「え……」 「何、その反応。俺 別れたつもりないけど」 そう言うと櫂は私の頭を引き寄せて私にキスをした。 「もっと俺に甘えてくれないと困るんだけど。そうじゃなきゃ自信なくす」 鼻が触れ合う距離で、櫂の息が唇に当たってこそばゆい。 ドキドキして顔が赤いのが自分でも分かる。 「俺だって嫌だった。叶絵が永草に触られんの。そんな場面絶対に見たくないから何が何でも一位で行ってやろうって決めてたのに、お前が永草に鍵投げろとか言うから。自力で鍵開けるって何?」 「あ、あれは……っ」 「器用に檻の中に鍵入れる永草も永草だけど、それを受け取る叶絵も叶絵だから。お前らマジで化け物」 「化け物……」 「『俺の叶絵に触んな』って思ったし、我慢出来なくて、あの時永草の肩掴んだ。そのあと永草に叶絵の事連れ去られたような感覚になって、頭の中真っ白になって。永草は何も悪くないの分かってたけど、八つ当たりしそうになった。そしたら叶絵が知らない女子に殴られたから病院連れて行ったって言われて、更にわけわかんなくなって。あの競技以降の自分の行動が思い出せない」 櫂は私の唇を親指でなぞると真っ直ぐ私の目を見つめた。 「俺、嫉妬で狂いそうなんだけど。俺の事『彼氏だ』って安心させて」 私が何か言う前に再び口づけられて身動きが取れなくなる。 半ば押し倒されるような恰好で、息もつけないように何度も何度もキスを求められた。 「な…んっ……」 何も言わせてもらえなくて、ただ息苦しくて涙が出てくる。 苦しいのに、そんな甘やかすみたいなキスするの、ずるい……っ。 満足したのか、櫂は私を見降ろして微笑んだ。 「ちょっと待ってて。飯作ってくる」 そう言って櫂が部屋から出て行く。 私は両手で顔を覆って動けずにいた。 もう、ほんと……あの人ずるい……っ。 顔の熱はまだ当分引きそうにない。 私はドキドキしている心臓を落ち着かせるように何度も深呼吸を繰り返すのだった。 ~体育祭~ ・
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