優等生と劣等生

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短い春休みも終わり、今日から私は高校生になる。 入試の時以来だ。 校門の前で立ち尽くすと後ろから肩を叩かれた。 振り返ると莉乃達がいた。 「おはよう、叶絵!」 「おはよう」 「やっぱり一緒に登校出来ないの寂しいな。仕方ない事だって分かってはいるけど」 「ごめんね。でも学校では一緒だから」 そう言って皆でクラス表を見に行く。 自分の名前を探して見つける。 私、4組だ。 「叶絵何組?」 「私は4組」 「私1組なんだけどー。離れるの嫌だよー」 私に抱き着いて項垂れる莉乃。 そりゃ別れるだろうとは思ってた。 だって私と莉乃は血は繋がらなくても姉妹なんだし。 同じ苗字だし。 1組のクラス表を見て櫂の名前も発見した。 「あ、ほら。櫂も一緒じゃん」 「私、櫂の傍から離れない」 「そんなことしたら入学初日から変な噂流れるよ」 「なんで叶絵と郁人は4組なの?」 「え?郁人、私と同じなの?」 郁人を見ると笑顔で頷いた。 莉乃と反対だったら良かったんだけどな。 そしたら櫂と一緒のクラスだったのに。 郁人と一緒なのは嬉しいけど、なんだか寂しい。 そういえば、櫂は親に言ったんだろうか。 『私と一緒に住みたい』って。 何も言ってこないところをみると、反対されたな。 当然と言えば当然だ。 落ち込む莉乃を励ましながら教室へ歩いて行く。 1組の前で莉乃と櫂と離れて私と郁人は4組の教室に向かった。 やっぱりこの学校に郁人は似合わない気がする。 教室に入ると私達は席を確認した。 「あ、叶絵と僕、隣だよ」 「本当だ」 私は窓側の席で、郁人はその隣だった。 あれ? 郁人の前の席の名前……。 「あ!叶絵!」 名前を呼ばれて振り返ると、案の定波音が私に手を振っていた。 「やっぱり波音だ」 「同じクラスになれたねー。よろしくね」 「こちらこそよろしく。あ、私の幼馴染の郁人。仲良くしてあげて」 「もちろん。いきなり王子と友達になれるとか超嬉しい」 「王子?」 「うん。入試の時に騒がれてたの知らない?『異国の王子様みたい』って。どうしてこの学校に来たのか不思議なくらいだよ」 本当にそれだ。 郁人は相変わらずニコニコしている。 自分の話をされているとは思っていないんだろう。 天然で鈍感だからな。 「私、松田波音。よろしくね」 「僕の方こそよろしくね。僕は岸谷(きしたに)郁人。波音ちゃん話しやすくていい人だね」 「そんなことないよ。郁人くんもふんわりしてていい人だよ」 二人で笑い合う。 なんだか莉乃と郁人の会話を見ている気分。 ・
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