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「どこに……」
「家だよ」
「……」
「叶絵の事だから私達と離れようとしてるでしょ?分かってるから」
「莉乃……」
「私は叶絵のお姉ちゃんだから、何があっても叶絵を守るよ。櫂が好きだから、櫂の口から別れ話を聞くのが怖いんだよね?」
莉乃の言葉があまりにも図星すぎて何も言えない。
私はただ俯きながらご飯を食べた。
「私、櫂が叶絵を傷つけるのなら絶対に許さないから。私は櫂と仲が悪くなっても後悔しないよ。何があっても私は叶絵の味方だから。だから私と一緒に家に帰ろうよ」
莉乃の言葉があまりにも温かくて泣きそうになる。
逃げてもいいって言ってくれてる。
私の気持ちを尊重してくれる。
私は莉乃に笑いかけた。
「ありがとう、莉乃。……帰ろうか」
私の言葉に莉乃は笑顔で頷いた。
櫂が道宮さんを選んだ事実は変わらない。
私がいくら好きでも、もう櫂の気持ちは手に入らない。
諦めるために離れる。
櫂に迷惑をかけたくないから。
私は莉乃と一緒に荷物をまとめた。
明日は丁度私と莉乃のバイトが無い日。
郁人も櫂もバイトだから二人でマンションを出ても分からない。
次の日。
同じように学校に行って、友達と何気ない話をして、いつもと何も変わらない日常を過ごして。
私は莉乃と一緒に帰った。
「明日は土曜日だね!帰ったら一緒にゲームしよ!」
「どうせ莉乃負けるじゃん」
「勝つまでやるの!休みなんだから寝かせないよ!」
明るくそう言って私の気持ちを軽くしてくれる莉乃。
昔から莉乃は私を元気にしてくれる。
お父さんの事を誤解して喧嘩ばかりしてた私の側にいつも来てくれて、励ましてくれて。
本当にいいお姉ちゃんだ。
私達が二人で帰るとお母さんは笑顔で出迎えてくれた。
それから私を優しく抱きしめてくれた。
その温かさが懐かしくて泣きそうになる。
皆に黙って家を出ようとしたあの日を思い出して懐かしくなりながら自分の部屋に入るとどっと疲れが出た。
気づかぬうちに私は幼馴染たちに遠慮していたのかもしれない。
櫂の顔を見れば気持ちが溢れてしまいそうで、郁人に酷いことを言ってしまいそうで、莉乃をまた傷つけてしまいそうで。
私が私を嫌いになりそうで。
仕事から帰ってきたお父さんも一緒に家族でご飯を食べた。
昔はこんな時間が苦痛だったのに、今はとても心地いい。
部屋で莉乃とゲームをする。
何度やっても負け続ける莉乃に笑いながら何度も相手をする。
それだけで心が軽くなった。
眠くなったのか莉乃はベッドを背にして寝落ち。
そんな莉乃に毛布を掛けて私は部屋を出た。
お母さんに近くの公園に行くことを伝えて家を出る。
スマホを確認するとものすごい量の連絡が来ていた。
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