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「それで?誤解も解けて良かったとは思うんだけど……。櫂!ちょっと叶絵と近すぎると思いますが!?」
莉乃は帰り道でそう叫んだ。
櫂は私の手を握って離さない。
郁人は私達を見てニコニコしていた。
「は?当たり前だろ。叶絵は俺の彼女なの。今まで触れなかった分、叶絵の事補給しなきゃなんだから」
「補給……!!」
なんで莉乃が信じられないとでも言いたげな目をしているんだろうか。
私は困ったように視線を地面に落とした。
どうしよう……。
実は今日、朝起きた時からずっと頭が痛いのだ。
絶対に風邪だって分かってるから櫂には離れてもらいたいんだけど……。
これでは離れてくれないだろう。
かと言って素直に『風邪ひいたっぽいから離れて』なんて言おうものなら櫂の事だ。
絶対にお姫様抱っこ。
熱もありそうだし、皆には心配させたくないんだけど。
素直にいった方がいいのはもう分かってる事だ。
私は悩むのを諦めて素直に伝える事にした。
「あの……櫂」
「何?」
「実は私、熱あるっぽくて……。朝から頭痛くてしんどいの。移ると困るからちょっと離れて……」
そう言うと案の定櫂に抱き上げられた。
「!?」
「なんでもっと早く言わないわけ?ここまで歩かせたじゃん」
「あ、歩けるよ!!」
「ダメ。心配だから」
こうなるから言いたくなかった!!
恥ずかしくて顔を両手で押さえる。
通行人が何事かと見てくるのに耐えられないからだ。
「私薬買ってから帰る!」
「じゃあ僕は食べれそうなもの買って帰るよ。櫂は叶絵をよろしくね」
「分かった」
私は櫂に抱き上げられた状態でマンションへと帰った。
ベッドの上に下ろされると布団をかけられる。
「とりあえず熱計って。今日土曜で午後の診察してないし、明日もし熱下がってなかったら休日診療で見てもらおう」
「そんな……寝てれば治る……」
「は?悪化したらどうすんの?」
櫂に問答無用で体温計を渡される。
熱を測ると37度8分の熱。
これは、しんどいに決まってるな。
櫂は体温計を見てため息をついた。
「この熱で『寝てれば治る』?寝ぼけてんの?」
呆れたようにして櫂は私の頭を撫でた。
「ほら、とりあえず寝て。郁人達帰って来たら起こすから」
「ありがとう……」
「いいんだよ。だって俺、叶絵の彼氏だし」
その言葉にときめいてしまう。
そうですね、好きです。
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