冬のはじまり

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しばらく櫂に頭を撫でられていると睡魔が襲ってくる。 特に抗う事も無く受け入れると櫂に「おやすみ」と言われたような気がした。 どれだけ眠っていたのか、先ほどと比べると随分と頭がスッキリしていた。 周りを確認すればまだ明るい。 水、欲しいな……。 ベッドから起き上がり部屋を出ると皆が驚いたように私を見た。 「叶絵、大丈夫!?」 莉乃が心配そうにそう言う。 私は頷いた。 「うん。さっきに比べればマシ」 「まだ寝てないとダメじゃん!」 「水欲しくて」 「それならラインして!」 むくれながら水を用意してくれる莉乃。 私は困ったように笑った。 そんな私の前に来る櫂。 「平気?」 「うん」 「倒れたりしないならいい」 あまりにも過保護すぎて笑えてきてしまう。 小さな子供じゃあるまいし、そこまで気にしてくれなくてもいいのに。 「季節の変わり目は風邪引きやすいから気を付けないとね。もう寒くなってきてるんだから」 郁人が私に肩から掛ける毛布を掛けてくれた。 「おでこの冷えピタも替えよう」 「郁人、お母さんみたい」 「早く元気になってもらわないとね」 郁人が私の冷えピタを交換してくれる。 こうやっていると、私は本当に幼馴染に恵まれたんだなって実感する。 自分自身を嫌って逃げ回っていた自分を怒りたいくらい。 もう一度ベッドに横になって目を閉じる。 幼馴染達が出てくる夢は全部悪夢だと思っていた。 あまりにも私が彼らを好きすぎて、私から離したいのに上手くいかなくて。 今は違う。 もう何度も見たお父さんが亡くなった日の事。 『嫌だぁ!!お父さん!!一人にしないで……っ!!』 棺の前で泣き叫ぶ小さな私。 大好きだったお父さんにしがみついて離れない。 泣き崩れるお母さん、それを支えてくれていたのは莉乃のお父さん。 ……義父さんだ。 そんな事も見えないふりをしていた。 ただ目の前で起きている事を信じたくなくて、これは悪い夢だって言い聞かせて。 世界が真っ黒に塗りつぶされていくような、そんな感覚だった。 お父さんが亡くなってからというもの、親戚は私を『悪魔』と罵り、暴力や暴言が当たり前になった。 私は人を不幸にする。 私のせいでお父さんは死んでしまったんだって子供の頃はそう思った。 だから、もう二度と大切なものを失くさないように、大事な幼馴染達を私から離そうとした。 お父さんと約束したからだ。 『叶絵。大事な友達は、何があっても守るんだよ。叶絵を大事に想ってくれている莉乃ちゃん、櫂くん、郁人くんの一番の味方は叶絵であるように。そしたらきっと、皆も叶絵を守ってくれるから』 私は皆を守りたかった。 自分のせいで不幸になんてしたくなかったから。 ・
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