優等生と劣等生

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席に座って何となく外を眺めると、隣から郁人に声をかけられた。 「そうだ、叶絵」 「何?」 振り向くと郁人に笑顔でお菓子を差し出された。 「これ、叶絵が探してたお菓子だよね?チョコラスクの限定味」 「あ、うん。でもこれ、どうしたの?」 「今日駅のコンビニに寄ったらあったんだー」 「珍しいね、郁人が朝からコンビニ行くなんて」 「実は、櫂がお昼忘れたって駅に行く前に言っててね。どうせならコンビニで買ってから行こうって流れになったんだ。それでたまたま見つけた感じ」 思いがけないお菓子のプレゼントにクスッと笑う。 小さい時から一緒だからか、お互いの欲しいものとかすぐに分かってしまう。 これだって私が直接探してるって言ったわけじゃない。 それなのに見つけて買って来てくれた。 幼馴染って凄いな。 「ありがとね、郁人。お礼に今度何か奢ってあげる」 「ほんと!?だったら帰りに商店街のアイス食べに行こう!」 「分かった。莉乃と櫂にも言っとく?」 「別に叶絵と二人でもいいけど、そんな事したら櫂にも莉乃にも怒られかねないもんね」 「別に怒らないよ。私が郁人を独占した方が怒る」 「二人とも叶絵の事大好きなんだから、こうして席が隣だって知っただけでも怒りそうなのに」 困ったように笑う郁人。 周りの女の子達が感嘆のため息を溢していた。 流石王子。 この学校でも女子生徒を一瞬にして虜にした。 「叶絵ー、郁人くーん」 別の子の所で話していた波音が手を振りながら戻ってくる。 「何?」 首を傾げると波音が廊下を指さした。 「一組の方で人だかり出来てるんだけど、叶絵と郁人くん関係ない?」 そう聞かれて郁人と顔を見合わせる。 一組は櫂と莉乃がいる教室だ。 二人に何かあったのかもしれない。 私達は一組へ向かった。 一組へ行くと先生が女子生徒も男子生徒も止めていた。 その中心にいたのは櫂と莉乃。 二人が女子生徒と男子生徒に囲まれている? こんな光景は中学の時もあった。 だから今更驚かないけど、入学初日でこうなるなんて思ってなかった。 生徒たちの合間を縫って二人に近づく。 「何事?」 そう莉乃に声をかけると泣きそうになりながら莉乃が私を見た。 「叶絵ー!!」 そう言って私に抱き着く莉乃。 「一週間後にあるオリエンテーションの遠足の話を誰かが職員室で聞いたみたいで、その班にならないかって誘いが多くてこうなって……。同じ班になれる子は限られてるし、皆と一緒の班になれないからどうしようかと悩んでたら周りの子同士で喧嘩になって……」 ・
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