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莉乃と私は同じ部屋で、櫂と郁人は二人で同じ部屋に。
荷物を置いて落ち着くと私達はテーブルに座った。
「郁人が絶対に怒らないでって言ってたのってコレの事?」
「うん。黙って進めてごめんね」
「ううん。言われてたら絶対に止めてた。郁人達の両親にも電話したりして絶対に来れないようにしてたと思う」
「お父さん達説得するの大変だったんだよ?」
莉乃が疲れたようにテーブルにうなだれる。
「だろうね。だって私、お母さんに言ってたから。『莉乃が私と住みたいって言っても絶対に賛成しないで』って」
「なんで!?」
「ていうか、そもそもあの人が莉乃と私を一緒にすることを許可するとは思ってなかった」
今現在の父親の顔を思い出して顔を顰める。
莉乃は私に笑いかけた。
「お父さんって案外優しいんだよ?」
「どこが」
「もー。相変わらず仲悪いなー」
苦笑いを浮かべる莉乃。
それから部屋の中を見た。
「それにしても、物少ないよね。なんで叶絵って物欲ないの?」
「欲しいものがたまたまないだけ。必要最低限のものはあるから生活には困らない」
「もっと可愛いの置こうよ!観葉植物とかさ!」
「誰が世話するんだよ」
櫂がため息をつきながら頬杖をつく。
さっき櫂に抱き締められていたかと思うとドキドキしてしまって櫂の顔が上手く見れない。
「私が頑張るもん!」
「莉乃は絶対にしない」
「櫂 酷い!!」
むくれる莉乃の頭を撫でる郁人。
それから私を見た。
「今度の休みに買い物行こうか」
「皆で行って来て。私は行かない」
「叶絵が行かないなら誰も行かないよ?」
ニコニコしながら何を言ってるんだ、この天然王子。
この人たちから逃げ場を作ろうなんて、今更無理な話だよね。
私は諦めてため息をついた。
「分かった。じゃあ行こう」
「やったー!観葉植物買おうね!」
「だから、絶対に枯らすからやめとけって」
「僕も面倒みるから大丈夫だよ」
3人の周りにいると、世界が少しだけ明るくなる。
さっきまで寂しかった感情はとっくにどこかにいっていて、私は心の中で3人にお礼を言った。
~優等生と劣等生~
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