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「莉乃、忘れ物ない?」
「大丈夫……あ!!ちょっと待って!!」
バタバタと部屋に忘れ物を取りに行く莉乃。
私はため息をついた。
莉乃達と一緒に住み始めて数日。
相変わらず莉乃はバタバタしてて、櫂はとても眠そうで、郁人はマイペース。
この3人を見ていると何故か心が落ち着くのはどうしてだろうか。
「今日は遠足だもんね!楽しい日にしよう!」
ニコニコしながら私の隣に並ぶ莉乃。
今日はオリエンテーションの遠足。
行先は近くの山だ。
朝から4人でお弁当を作って、この間買い物に行った時に買ったお揃いのランチバッグに入れてカバンに入れた。
朝から櫂に後ろから抱き着かれて、『叶絵の作った玉子焼きちょうだい』って甘えたように言われたときは死ぬかと思った。
ニヤニヤしていた莉乃を無視してお弁当を作ったけど、ドキドキしてしまって味が変になってしまったような気がする。
「莉乃、友達に迷惑かけないようにね」
「なんで私が迷惑かける前提!?」
「莉乃が常に俺達に迷惑かけてるから」
「ちょっと櫂!?」
「いいんだよ、莉乃。僕たちは迷惑をかけられても嫌いになったりしないから」
「郁人の優しさがなんだか辛い……!!」
拗ねる莉乃を引っ張りながら学校へ向かう。
学校に着くと私と郁人は教室に入った。
「おはよう、叶絵」
波音がひらひらと私に手を振る。
私は椅子に座って波音に挨拶をした。
「郁人くんもおはよー」
「おはよう、波音ちゃん」
「今日は山登りだし、軽く運動してきたんだー。超楽しみにしてた」
「僕も楽しみだったよ」
「皆でお弁当食べようね」
波音と郁人の会話を聞きながら外を眺める。
すると前に福永くんが座った。
「おはよー!郁人と叶絵と波音!山登りには最適な天気だなー!」
「朔夜って運動好きそうだもんねー。張り切り過ぎて帰りに爆睡するタイプ」
「否定は出来ない!」
「出来ないんだ」
郁人が楽しそうに笑う。
本当に波音と福永くんは元気だな。
この会話を聞いていて嫌な気がしないのは、私がこの二人を好きだからだろう。
友達になれて良かったと思ってる自分がいることに驚きだ。
クラスの人達も揃って、私達は山に向かった。
体操服に着替えて山登りを開始する。
私の隣にいる萌音が憂鬱な表情でため息をついた。
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