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「どうしたの?」
「萌音、運動嫌いなのー……。しかも山登りとか、誰が得するのー……?」
「得とかないと思うけど」
「かなちんは運動とか好きそうだもんね。スポーツ女子、カッコいいなー」
「別に運動が好きなわけでも、スポーツが出来るわけでもない。山登りなんて歩いてれば勝手に頂上着くんだから楽勝でしょ」
「運動出来る人の発言ですよ、はのはのー。どう思います?」
「これは私達に宣戦布告してきてますねー、萌音さん」
「何なの、二人とも」
呆れたようにため息をつくと、波音と萌音が私の両サイドに立った。
「何?」
「んー、なんか叶絵が他のクラスの男子にジロジロ見られてるからムカついて」
「は?」
「目つきがやらしいー。かなちんを性的な目で見るな、男子ー」
威嚇している二人。
別に私は慣れてるから何とも思わないんだけど……。
それでも私のために怒ってくれている二人が好きだと思った。
優しいな、二人とも。
「私を本気で好きになる人なんていないから平気。観賞用にでも思ってるだけでしょ。私なんて見ても目の保養になんないのに」
「相変わらず自分を下に見てるよね、叶絵」
「かなちん超美人さんじゃん。もっと自信もっていこーよ」
「ありがとう」
「心こもってなーい」
波音が拗ねる。
私は波音に苦笑いを浮かべた。
「かなちんと、はのはのに聞きたかったんだけどー。二人とも好きな人っているの?」
突然萌音が目をキラキラさせながら聞いてくる。
好きな人……。
頭の中に浮かぶ櫂の顔。
想像だけでも顔がいい。
「私はいないかな。中学の時に付き合ってた人はいたけど、キス以外何もしなかった」
「かなちんは?」
「私……」
好きになっても迷惑なだけ。
そう思っていつも隠そうと、なかった事にしようと思ってる。
でも、櫂を好きな気持ちが最近どんどん増えてきて。
いつの間にか櫂を目で追ってる時がある。
「……いる」
私がそう言うと二人が食いついた。
「それって誰?」
「いーくん?」
「いや、郁人じゃない」
「じゃあ、もう一人の王子?」
波音が前の方を歩く櫂を見る。
それから二人がニヤニヤしてきた。
「あれはイケメンだねー。入試の時も思ってたけど」
「でもかなちんとは幼馴染なんでしょー?チャンスありありじゃん」
「チャンスなんて無いよ」
「え?なんでー?」
「櫂にとって私は単なる幼馴染。それ以上にはなれない」
そう言い切って私は前を向いた。
幼馴染なんて、近くなんてない。
一番遠い存在なんだから。
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