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私は櫂が側に来るだけでいつのもように振舞えなくなるけど、櫂はいつだっていつも通り。
ドキドキしているのは私だけ。
櫂が私を好きになってくれるわけない。
誰が好き好んでネガティブな人間を好きになるのか。
私だったら絶対に好きにならない。
「あのイケメンって名前なんて言うの?」
波音にそう聞かれて櫂から波音に目線を移す。
「櫂」
「櫂くんかー。イケメンの周りってどうして人が多いんだろうね」
「櫂は昔から人を惹き付ける何かがあるから。郁人も莉乃も同じ。櫂ってめんどくさがり屋なんだけど、絶対に周りが助けてくれたりするんだよね」
「イケメン、得ー」
萌音が楽しそうに笑う。
しばらく私達はそんな会話をしながら一緒に歩いていた。
「ここで少し休憩するぞー」
先生の言葉に皆が川辺に座り込む。
結構歩いたな。
綺麗な川が近くに流れている。
学校の人達が楽しそうに川で遊んでいるのが見える。
それをぼんやり眺めている櫂を見ている私って気持ち悪いな。
「この辺深そうだねー、気を付けないと」
波音が川を眺めてそう言う。
私も川を見ると確かに深そうだった。
「萌音泳げない」
泣きそうな萌音。
そんな萌音の肩を波音がポンポンと叩いた。
「落ちなきゃ大丈夫」
「はのはのー、絶対に萌音の側から離れないで」
波音にしがみつく萌音。
私は二人を見てクスッと笑った。
「皆で何の話してたの?」
私達のそばに郁人と福永くん、永草くんがやって来た。
周りの女子が郁人の笑顔に見とれている。
本当に凄いな、郁人って。
「川、深そうって」
「確かに深そうだね。皆気を付けてね」
「いーくん優しー。好きになるー」
「萌音、簡単な女」
「はのはの酷い」
膨れながら波音の腕を殴る萌音。
波音はそんな萌音の頭を撫でた。
「茅ヶ崎さん」
突然知らない男の子達から声をかけられる。
私にとってはいつものことだから気にならないんだけど、波音と萌音は警戒していた。
あー、この感じ、多分『連絡先交換してくれ』ってやつだ。
何となくそんな事を考えていると男の子達は思っていた通りの事を言った。
「俺達隣のクラスなんだけど、良かったら連絡先交換してくれない?」
「別にいいけど、私連絡とかあまりしないけどいい?」
むしろ絶対に連絡返さないけど。
そう思いながらスマホを取り出すと波音と萌音が私と男の子達の間に立った。
「ダメですー」
「波音?」
「下心見え見えー。かなちんが美人だからって調子乗って声かけてくんな男子ー」
「萌音?」
二人が私を振り向いて怒った顔をする。
「叶絵はもうちょっと危機感もった方がいい」
「かなちん不用心すぎ」
「どうしたの、ふたりとも」
「こんなの明らかに自慢したいだけか、あわよくば彼女にって考えてるに決まってるじゃん」
「そんなの分かってるよ、波音」
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