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驚いていると後ろから聞こえてきた声は櫂のものだった。
「悪いんだけど、こいつ単純で危なっかしいから連れて行くのやめてもらっていい?」
「櫂……?」
「俺達、結構見た目で判断されたりするから下心あるかどうかの見分けつくんだよね。だから、金輪際こいつに関わるのやめて」
櫂はそう言うと私の手を引いて歩き出した。
そして波音達がいる場所に連れてくると手を離した。
「あ、ありがとう……」
「ほんと、全然目が離せない」
不機嫌極まりない櫂の表情に小さくなる。
すると郁人が口を開いた。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、櫂。叶絵だって子供じゃないんだし、ああいうの簡単にあしらえるでしょ?」
「だとしても、叶絵は自己肯定感が低いから『自分なんてどうでもいい』とか思ってるだろ。俺はそれが怖い」
「それは僕も心配だけど、過保護も良くないと思う」
郁人と櫂が言い合っていると私の側に波音と萌音が近づいた。
「王子が二人で言い争ってるー。目の保養」
「ちょっと波音」
「はのはの、愛されてる」
「萌音まで……」
ため息をついて私は二人の間に入った。
「ごめん、今回は私が悪かった。心配かけてごめん。次からはちゃんとするから、ここで言い合わないで」
周りが何事かと見ている。
入試の時から騒がれていたイケメン二人が言い合っているなんて、周りからしたら興味以外ないだろう。
困っていると莉乃が友達と一緒にやって来た。
「もぅ!叶絵の事困らせないでって言ってるでしょ!?櫂!!」
「なんで俺……」
「叶絵の事になったら本当に後先考えないんだから。櫂の友達ビックリしてるよ?早く戻りなよ」
櫂はため息をついて友達の場所まで歩いて行く。
私はドキドキしている心臓を落ち着かせようと深呼吸をした。
莉乃も私と郁人に手を振って櫂達の所へ行く。
郁人は私の隣に立った。
「櫂は本当に叶絵が心配なんだね」
「嬉しいけど、ちょっと困る」
息をつくと急に女の子の怒鳴り声が聞こえた。
今度は何。
「ちょっと!なんで相馬萌音がここにいるわけ!?」
萌音の事を指さして怒っている女の子。
一体何?
「人の彼氏たぶらかしといて私達と同じ学校来てるなんて、どんだけ面の皮厚いわけ!?神経どうなってるの!?」
人の彼氏をたぶらかした?
その言いがかりは私や郁人にも身に覚えがある。
勝手に好きになられたのに、どうしてこっちが悪くなるんだろうか。
「だから、萌音は好きじゃないもん。勝手にあんたの彼氏が萌音に一目ぼれしただけでしょ?」
「私の事を大好きなのに、アンタみたいなぶりっ子好きになるわけないじゃん!!」
絶対勘違いだ。
私は郁人と顔を見合わせた。
「ていうかー、萌音彼氏いるって知ってるよね?あんたの彼氏みたいなブス、好きになるわけないし」
そっぽを向く萌音。
これは非常にまずい。
相手を怒らせてもいい事なんて一つもない。
そう思っていた時だった。
「あんたって本当に性格悪い!!本当に嫌い!!」
そう言って女の子は萌音に近づいて、萌音を川に突き飛ばした。
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