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山登りも終わり、私達は学校に戻っていた。
あんな事があったけど、萌音も気にしていないように波音と話している。
本人が気にしてないなら私がこれ以上何か言うのは違うな。
私は息をついた。
「そういえば、聞きたかったんだけど、どうして叶絵はこの学校に来たの?」
「え?」
「だって、問題起こしそうにないし。頭悪いわけじゃないでしょ?」
波音が不思議そうに聞いてくる。
そりゃ気になるか。
私は永草くんや福永くんと話している郁人をチラッと見てから口を開いた。
「本当は、幼馴染と離れたかったの」
「え?でも一緒に入試来てたじゃん」
「私は一人でこの学校を受けるつもりだったの。それが何故か莉乃達が一緒に入試受ける事になって……。莉乃達は私とは違って頭いいし、絶対に進学校にだって行けてた。皆の人生を、これ以上狂わせたくなかったのに」
私の言葉に波音と萌音が顔を見合わせた。
「かなちん」
「何?」
「いーくん達、かなちんの事が大好きなんだと思うよ?」
「え?」
「だって、今日だってかなちんが絡まれてたら助けに来てくれたじゃん。私もかなちん大好きだし、いーくん達の気持ち分かるから……」
「萌音……」
「もっと、いーくん達を信用してあげてほしいな」
萌音は悲しそうに微笑んだ。
それは私も分かってる。
私だって皆が大好きだ。
だからこそ離れないといけないって思うんだよ。
私と莉乃達は違うんだよ。
でもそんな事二人は知らない。
二人には絶対に知られたくない。
私は曖昧に頷いた。
「じゃあ、また休み明け!叶絵の恋バナ聞かせてよ」
「え?」
「そうだよー!かなちんが好きな王子様との恋バナ、萌音も聞きたい!」
「恋バナって……。私は別に櫂と付き合いたいとかそんな……」
「明日は休みなんだし、幼馴染でどこか遊びに行ったら?叶絵が皆をどう思ってるかは分からないけど、そんなに遠ざけようとしなくてもいいと思うよ」
波音はそう言って笑った。
私は二人にお礼を言って帰る支度をする。
それを見た郁人が私の側に来た。
「もう帰る?」
「うん。晩御飯の買い物しないとだし」
「じゃあ僕も付き合う」
「郁人は先に帰ってていいよ」
「ダメ。変なのに絡まれたらどうするの?とりあえず櫂と莉乃にラインだけしといて……」
郁人はスマホをいじると二人にメッセージを送った。
「二人ともまだ教室で友達と話してるんだって。どうする?待つ?」
「待たない。郁人は待っててあげなよ」
「だから叶絵一人にしないって言ってるでしょ?」
郁人は怒った顔をすると私の腕を掴んだ。
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