オリエンテーション

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私と郁人は適当に買い物を済ませて櫂と莉乃を待った。 しばらくすると二人が私達の所にやって来た。 「なんで二人で先に行っちゃうの!?」 莉乃が怒りながら私の腕をポカポカ殴ってくる。 「先に帰ってればいいのに、なんで来たの?」 「どうしてそんなに冷たい事言うの!?叶絵!!」 「いや、だってもう帰るだけだし。用事ないし」 そう言うと莉乃が膨れた。 「はいはい、莉乃。落ち着いて。一緒に帰ろう」 郁人になだめられて莉乃が頷く。 どうしてそんなに怒るんだろう。 私が郁人と二人でいたから? 幼馴染なんだから別にどうにもならんのに。 「叶絵」 櫂に名前を呼ばれて振り返る。 すると櫂は私の肩に頭をくっつけた。 抱き締められているわけじゃないのに抱き締められているような感覚。 え、これ何……。 「ちょ、ちょっと櫂……」 「俺が叶絵と同じクラスだったら良かったのに」 「え?」 「そしたら俺が叶絵と二人で帰れたのに」 どうしてそんな思わせぶりな事言うの? なんで私を嬉しくさせるような事……。 「……ただ買い物してただけだよ。別に郁人と二人で帰ってたわけじゃない」 「結果帰ってるじゃん」 「なんでそんな不機嫌なの?」 「……」 そこに関してはだんまりなのか。 私は息をついた。 「櫂」 「何」 「一緒に帰ろう」 そう言うと櫂は私から離れて、それから少し笑った。 この櫂の笑顔、本当に好きだな。 櫂は私の持っていた買い物袋を持って私の手を引いた。 付き合ってもない女の子にこんな事するなんて。 櫂って思わせぶりだな、ほんと。 「今日って晩御飯何にするの?」 莉乃が首を傾げて聞いてくる。 私は買い物を見て口を開いた。 「今日はとんかつにしようかなって」 「お肉ー!やったー!」 喜ぶ莉乃を微笑ましく見る郁人。 櫂は欠伸をした。 ・
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