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莉乃はいつも成績優秀でいい子で優しくて、そして美人で可愛い。
性格も悪くないし、まさしく理想的な女の子だ。
告白だって毎日のようにされている。
こういう女の子になりたかった。
なろうと頑張った。
だけど私には無理だった。
そんな無理な事をあの人は『しろ』と言ってくる。
私を人形のようにしようとしてくるんだ。
だから嫌いなの。
私はゲーム機を起動させながら口を開いた。
「本当に莉乃ってマイペース」
「そう?」
「天然だし、ドジだし」
「ちょっと、褒めてない!」
「でも、いつも助けられてる。ありがとう」
そう言うと莉乃は嬉しそうに笑った。
こうやって家族になっても私と莉乃の関係は何一つとして変わらない。
私の苗字が変わるだけ。
それだけ。
クラス委員を務める莉乃と、やる気のない問題児の私。
周りから見れば、私が莉乃に絡んでいるようにしか見えないだろう。
それでも莉乃の隣は居心地がいいから……。
そう考えてハッとする。
ダメだ、この考えを捨てるって決めたんじゃん。
中学3年になったばかりの時に決めた。
私は、大事な幼馴染を守るために離れるんだって。
絶対に幼馴染達が行きそうにない学校を志望校として選んだ。
莉乃とは家の中で会えるだけで、それでいいの。
学校でまで一緒にいたらきっと莉乃を良くない方向へ導いてしまう。
あいつに、また嫌味を言われるだけ。
それだけは絶対に嫌。
「そういえば、明日の休みに皆で遊ぼうって話してたでしょ?」
「え?あー……そうだっけ?」
「もう、また聞いてない。新しく出来たカフェ行こうって言ったじゃん」
「そうだった気がする……」
「郁人と櫂に連絡しないと。何時に待ち合わせにする?」
郁人と櫂は私と莉乃の幼馴染。
私達4人は小さいときから家が近くて一緒に遊んでいた。
莉乃みたいに優等生で優しくて、そして天然で雰囲気がフワフワしてて、完全なる王子様性格と見た目の郁人。
そんな郁人とは対照的に、あまり話さないクールな性格で意地悪でドS、それなのに頭がいいし運動神経もいいという納得できないスペックを持っている櫂。
二人ともイケメンだし、莉乃みたいに毎日のように告白されている。
「朝は起きたくない」
「そうやってダメ人間になっていくの。朝から遊びたい」
「莉乃は元気だよね。私、途中参戦でもいい?」
「ダメに決まってるでしょ。私が強制的に叩き起こすから大丈夫」
「起こさなくていい。はい、私の勝ち」
「あ!!ずるい!!私がゲームに集中してないからって容赦なく!!」
「莉乃が持ってきたくせに集中してないって何事」
二人で笑っていると私のスマホが鳴った。
相手を確認すると、相手は櫂だった。
「何?」
『どうせ暇だろ』
「ちょっと、用件も言わずに、しかも決めつけて話するのやめて」
『莉乃と一緒に近くの公園来い』
「なんで?」
『郁人と待ってるから』
用件を伝えると強制的に切られた。
なんだ、この横暴な王子様。
私はため息をついて莉乃を見た。
「櫂が近くの公園来いって」
「え?どうして?」
「知らない。郁人も一緒なんだって」
「ちょうど良かった。明日の事も決めたかったし」
「面倒くさい……」
「ダメ人間発言やめて。ほら、行こう」
莉乃に手を差し出されて立ち上がる。
それから一緒に家を出た。
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