放課後

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マンションに帰って莉乃や櫂に土曜に遊びに行くことを伝える。 すると二人に驚かれた。 「叶絵が誰かと遊びに行く……?」 「なんでそんな衝撃的な顔してるの、莉乃」 「だって、あのめんどくさがりの叶絵だよ?私が誘っても絶対に一回じゃ首を縦に振らない叶絵だよ?」 「ちょっと、私を何だと思ってるわけ?友達の誘いくらい受けるに決まってるでしょ」 「私の誘いは!?」 莉乃が不満そうに両手をばたつかせる。 それから恨めしそうに郁人を見た。 「その子、郁人の事好きだったりしない?」 「なんでそうなるわけ?」 「だって、郁人まで誘うなんてさ」 「別に郁人だけ誘ったわけじゃないから。永草くんの事も誘ってたし」 そう言うと莉乃が驚いたように立ち上がった。 「永草くん!?それって、永草凛くん!?」 「え?そうだけど」 「その子がしてるバンドって、配信サイトで人気なんだよね!?海梨ちゃんが教えてくれたよ!同じ学校にいるって聞いてたけど、まさか叶絵達のクラスにいたなんて知らなかった」 そんなに人気だったんだ。 意外な事に郁人と顔を見合わせる。 確かに永草くんはイケメンだなと思ったけど。 今度時間があるときにでも動画見てみようかな。 そう考えていると櫂が私の顔に手を伸ばした。 「櫂?」 「叶絵さ、俺達の事は避けようとするくせに友達になった奴らの事は避けないんだ」 「え……」 「なんかムカつく」 櫂はそう言うと私から手を離してテーブルに突っ伏した。 確かに、酷いことをしているのかもしれない。 でも、私が3人を避けたいのは私と同じではないからだ。 私の大事な3人を、私のせいで苦しめたくないからだ。 だって私は3人を守らないといけないから。 そうお父さんと約束したから。 「……3人は私とは違うから」 そう言って私は部屋に戻った。 幸せでたまに忘れてしまう事があるけど、ふとした瞬間思い出す。 『そうだ、私は離れないといけないんだ』って。 この学校に来させてしまった、一緒に住むようになってしまった。 これ以上皆の生活や人生を狂わせるわけにはいかない。 分かってるのに、たまに忘れて昔のように接してしまうのだ。 本当に私って弱い人間……。 私はため息をついてベッドに横になった。 ・
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