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約束の土曜日。
私と郁人は波音と永草くんを駅前で待っていた。
周りの女の子にチラチラ見られている郁人。
本人は全く気にしていない。
いつもの事だから慣れただけだろうけど。
一緒に立ってるこっちの身にもなってほしい。
「なんか、叶絵と二人だけで行動するのって新鮮だな」
「そう?」
「だって僕らって4人で行動すること多かったでしょ?こうして幼馴染以外と遊ぶ時って、皆干渉すること無かったし。同じ人が友達っていうのも案外なかったでしょ?」
そう言われてみればそうかもしれない。
それぞれに友達がいて、それぞれが別の人と一緒にいた。
こうやって同じ人物を待ってるなんて無かったな。
「不思議だね」
「最近叶絵と沢山話せて僕は嬉しいよ」
「……ごめんね」
「どうして謝るの?」
「郁人、無理してるんじゃないかなって思って」
「無理?」
「だってこの学校は絶対に郁人に合ってない。郁人は頭がいいし、絶対に偏差値の高い学校に行けたはず。それなのに私を心配して一緒に来てくれた。大学進学、難しくなっちゃったかも」
「そんなの叶絵が気にすること無いよ。僕が自分で決めて入学したんだから。それに僕はこの学校に入学出来て良かったって心の底から思うよ」
「え?」
「だって、今まで友達にならなかったような人達とも友達になれた。叶絵のおかげでクラスに馴染めたって僕は思ってるから。クラスの人達は本当にいい人達ばかりで、毎日学校に行くのが楽しみだから。それに、勉強が全てじゃないでしょ」
郁人はふわっと笑うとスマホを見た。
「もうすぐ着くって。さっき波音ちゃんと電車で出くわしたって凛くんから」
「そう」
「今日は楽しもうね」
郁人の言葉に私は笑い返した。
本当に、郁人って王子様だな。
そんな事を考えていると波音と永草くんがやって来た。
「電車で永草くんと出会ったんだけど、永草くんと一緒に立ってるだけで彼女って勘違いされて何か申し訳なかった」
「俺は波音ちゃんと付き合ってるって勘違いされても困らないよ?」
「そういう事をさらっと言ったら勘違いする女の子だっているから気を付けて」
波音は少し頬を膨らませながら永草くんを睨んだ。
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