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「それにしても本当に二人って絵になるよねー。並んでるだけで綺麗っていうかさ」
私と郁人を交互に見て波音がため息を漏らす。
「何言ってるの?郁人はともかく私は違うでしょ」
「はいはい、自覚のない美人さん。周りの目を見てそれを言ってるのか」
波音は首を左右に振ると私に指を突きつけた。
「自覚無いのはもういいけど、嫌味にしか聞こえないから。素直に肯定してくれた方がまだマシ」
「ご、ごめん……」
納得したのか波音が笑顔で手を叩く。
「うむ、よろしい。それじゃあ行こうか!」
目的地に向かって皆で移動する。
その時に永草くんをチラッと見てみた。
郁人と並んでてもおかしくないくらい永草くんも綺麗な顔してるな。
ネットで騒がれているという情報を萌音から入手したその日にスマホでネットを確認したら、永草くんの人気を目の当たりにしてしまった。
結構な有名人と友達になってたんだと分かった瞬間、どうしてかひゅっと寒い何かがこみ上げた。
バンドしてるって言ってたけど、あれほど人気だとは思ってなかったし。
デビューを望んでる人も沢山いた。
ボーカルの女の子の声も凄く綺麗で、曲も凄くカッコいいもので。
私もファンになりそうだったから。
目的地に着くと波音はウキウキしながらメニューを開いた。
店員さんは郁人と永草くんを見て目をキラキラさせている。
「フルーツ丸ごと使ってるー!どれも美味しそうだなー」
「どれが食べたいの?」
「うーん、悩む。一番はこのオレンジなんだけど、メロン丸ごと使ってるとかいうのも気になるし……」
「じゃあ私がメロン頼むから一緒に食べる?」
「え!?いいの!?」
「うん。だって私、こんなに食べられないし」
「叶絵、神!ありがとう!」
「郁人と永草くんは決まった?」
「僕はぶどうにする」
「俺はグレープフルーツかな」
全員の注文を聞いて店員さんが戻る。
向こうから何やら騒がしい声が聞こえてくるのはいつもの事だ。
誰が持って行くか喧嘩でもしてるんだろう。
私はため息をついた。
「今日は付き合ってくれてありがとね、皆」
「波音ちゃんが嬉しそうならこっちも嬉しいよ」
「はい、出ました。永草くんの天然タラシ。私じゃなかったら簡単に落ちてたかもねー」
「思った事言っただけだよ」
「無自覚のイケメンだな、相変わらず」
波音と永草くんのやり取りを見て微笑んでいる郁人。
波音は本当に友達を作るのが上手いな。
中学でもこうやって友達を作って沢山友達がいたんだろうな。
なんとなくそう思っているとパフェが運ばれて来た。
目の前に置かれるクリームの悪魔。
見るだけで胸やけ起こしそう。
「美味しそうー!いただきまーす!」
美味しそうにパフェを頬張る波音。
私も一口食べる。
確かに美味しいけど、私にはちょっとでいいな。
そう感じていると郁人が私を心配そうに見た。
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