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「叶絵、大丈夫?」
小さな声で問いかけてくる郁人。
私は苦笑いをした。
波音には悪いけど本当にクリーム系が得意じゃない。
そんな事を考えていると郁人が私のパフェを自分の方に持って行った。
「あれ?叶絵、もう食べないの?」
「うん、ごめん。昨日からちょっと食べられなくて……」
「そうなの?ごめんね、それなのに付き合わせて」
「ううん、波音は悪くないから。私が付き合うって言ったんだし。それよりも気分悪くさせてごめん」
「そんなのいいって。郁人くん、食べれる?」
「食べれるよ。僕、甘いの好きだから」
そう言って郁人は私に微笑んだ。
私は口パクで『ありがとう』と郁人に伝えた。
「それにしても、本当に郁人くんも永草くんも女の子達に騒がれるよね。今だって、店の女の子全員二人のトリコ」
「僕じゃなくて永草くんだよ」
「俺じゃないって、郁人くんでしょ」
「自覚無いイケメン。叶絵と一緒か」
「ちょっと、二人と一緒にしないで」
「美形は皆自覚ないの?それがデフォルト?」
波音は信じられないと言わんばかりにため息をつく。
「でもさ、どうして郁人くんも永草くんもあの学校受けたの?なんか二人ってどう見ても馬鹿には見えないじゃん」
「僕は叶絵が受けるから」
「過保護か」
「その通り」
波音の言葉に同意すると郁人が不思議そうに首を傾げた。
「永草くんは?」
「俺は単に自由に出来るから」
「自由?」
私が聞き返すと永草くんが綺麗に微笑んだ。
「俺、バンドしてるから。曲とか作ってるんだよね。だから急に曲が浮かんできたりしたらサボれるなって考えて」
「サボる前提で入学したの?」
「だって、あの学校が一番偏差値低いって聞いたし。基本的に何をしてても怒られないって言ってたから」
悪意のない笑顔を向けられて波音と二人でため息をつく。
イケメンの考える事って分からない。
「そうだよね。永草くんのバンドって確かネットで大人気だもんね」
「そういえば……。私も見たけど、凄くいい曲だね」
私が褒めると永草くんが驚いたように私を見た。
「見てくれたの?」
「うん。萌音に教えてもらった」
「そっか。ありがと」
永草くんに微笑まれると何だか不思議な気持ちになる。
ふわふわした気分になるっていうか。
魔性の男だな、この人。
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