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パフェも堪能してから私達はしばらく街を歩いた。
莉乃達と一緒に居るときも楽しいけど、波音達と一緒に居るこの時間もとても楽しかった。
波音と永草くんのかみ合わない話を聞いているだけで笑顔になれてしまう。
夕方になって私達は家に帰る事に。
波音と永草くんと駅で別れて私と郁人は二人でマンションまでの道のりを歩いた。
「叶絵」
「何?」
「叶絵は櫂に好きって言わないの?」
突然何を言い出してくるのか。
赤くなって咳き込むと郁人が不思議そうにした。
「だってどう見たって二人とも好きなのに」
「櫂が私を?そんなわけないでしょ。櫂にはもっと可愛い女の子が似合うの」
「叶絵だって可愛いよ」
「それは幼馴染補正がかかってるからでしょ。実際私は可愛げもないし素直じゃない。可愛いって言われる要素が全くない」
「そうかなー。櫂には叶絵が必要だと思うけど」
「そんな事ない。だって、櫂達のクラスには莉乃の友達がいるでしょ?その子と櫂は普通に話してるって言ってたじゃん」
「その子が櫂と仲良しでも、櫂がその子を好きになるとは限らないじゃん」
どうしてそんな意地になって言ってくるんだろう。
私は最初から櫂と付き合えるなんて思ってない。
櫂が私に優しいのは私が櫂の幼馴染だからだ。
お父さんが死んでから精神的に不安定だった時の私を見ているからだ。
それ以上の感情は絶対に無い。
私が櫂を好きなだけでも櫂にとっては迷惑な話かもしれないのに。
「じゃあ聞くけど、郁人は莉乃に告白しないの?」
郁人は莉乃が好きだ。
多分だけど……。
郁人の反応は無いけど、そんな感じはずっとしてた。
どうしてかは分からないけど。
ダメもとで聞いてみたけど、私の予想は当たっていた。
「今の莉乃に告白しても絶対に付き合ってもらえないから言わない」
「なんで?」
莉乃は郁人が好きなはずだ。
告白されれば絶対に上手くいくだろう。
「だって莉乃、今まで告白してきた男の子達に『付き合うって何?』って素で聞き返してるんだよ?そんな悲しい目にあいたくない」
そうだった……。
莉乃のあの天然に男の子達が何度も泣かされていたのは知っている。
たとえそれが郁人であっても言いそうなのは否定できない。
私と郁人は同時にため息をついた。
「今は莉乃と一緒に住めるだけでも嬉しいから。それに学校も一緒だし」
「そうだね。私も櫂と一緒にいられるだけで嬉しい」
その結論に至って、私達はマンションへ足を踏み入れた。
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