放課後

8/17

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
郁人との会話を思い出して櫂の顔が上手く見れない……。 「なぁ、叶絵。なんで俺の顔見ないわけ?」 そんな不機嫌に言われても答えられるわけがない。 好きだから告白出来ないし、告白して今の関係が壊れてしまうのが怖い。 櫂は私なんて絶対に何とも思ってない。 そんな奴に告白されて困るのは櫂だ。 郁人と莉乃がテレビでゲームをしている後ろで、私と櫂はテーブルで向かい合っていた。 「べ、別に。スマホに夢中なだけだし」 「相手だれ?」 「友達」 「男?」 「誰でもいいじゃん」 「いいわけない」 なんでそんな思わせぶりな事言うの? 櫂も私が好きなのかなって勘違いするでしょ? 「……女の子だよ。彼氏とデートだったんだって」 「ふーん」 私は納得していない櫂にスマホの画面を見せた。 私が見ていたのは萌音のインスタだ。 楽しそうに彼氏と映った写真をあげている。 櫂はその写真を見ると「あ」と言った。 「ここって最近出来たばっかの水族館じゃん」 「え?」 「そういえば、昔一緒に水族館行ったよな。俺の家と叶絵の家で」 そうだ。 お父さんが亡くなって元気が出なくて落ち込んでばかりいた時。 お母さんに誘われたのが水族館だった。 櫂のお母さんと櫂と私のお母さんと。 何を見ても楽しくなくて、何を言われても笑顔になれなくて。 そんな私の手を掴んで大きな水槽の前で櫂は私に言ってくれた。 『俺がこれから先ずっと叶絵の事守るから。ここで誓うよ』 そう言ってくれた事が嬉しくて、そのまま私は泣いてしまった。 そのあと櫂は櫂のお母さんに怒られてて、それでもずっと私の手を離そうとはしなかった。 「また一緒に水族館行こうな」 そんな優しく笑いかけるなんて……。 本当に櫂はズルい人だな。 「そうだね」 「言っとくけど『二人で』だから」 「え?」 「郁人はともかく、莉乃がいたら絶対にうるさいし周りに迷惑。今だって……」 櫂が後ろの莉乃を指さす。 その瞬間。 「イヤー!!なんで私ばっかり襲われてるのー!?」 「莉乃は元気だなー。あ、僕もう出れる」 泣き叫ぶ莉乃にマイペースな郁人。 櫂は呆れたように「な?」と言った。 そんな櫂に私はクスッと笑って頷いたのだ。 ・
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加