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公園に着くと、そこにはすでに郁人と櫂がいた。
私と莉乃に笑顔で手を振ってくる郁人。
少しだけ茶色が入った髪色で垂れ目な美形男子。
さすが、オランダ人と日本人のハーフ。
そんな郁人に手を振り返す莉乃。
嬉しそうだな、莉乃。
小学生の時からだろうか、莉乃はきっと郁人が好きだ。
私に言ってきたことは無いけど、莉乃の反応をずっと見ていた私だ。
絶対にそうだと言い切れる。
でも郁人はどうだろう。
この天然王子は反応がいまいち読めない。
どうして誰とも付き合わないんだろうって不思議になるくらいだ。
恋愛なんかに興味ないとか?
莉乃が告白されても誰とも付き合わないのはきっと郁人が好きだから。
櫂も郁人も、変なの。
「急に呼び出してごめんね」
「大丈夫だよ!叶絵と一緒にゲームしてただけだから」
「叶絵にゲーム挑むなんて、莉乃って勇気あるね!」
「だって叶絵ってば、全然相手にしてくれないんだもん。同じ家にいるのにさ、ゲーム持って行かないと話し相手にもなってくれない」
「そ、そんなことはない……」
「そんな事あるもん」
むくれて私から顔を背ける莉乃。
どうして私、怒られてるの。
ため息をついて目を逸らすと、眠そうにあくびをしている櫂に視線がいった。
黒髪のくせっ毛で、ちょっと猫目になってる美形男子。
櫂が私を見て首を傾げる。
「何?」
「いや、それ私のセリフなんだけど。いきなり呼ばれて来たんだから」
「あー……そうだったな」
そう言ってブランコの柵に腰掛ける櫂。
それから隣をポンポンと叩く。
「くれば」
「……うん」
櫂の隣に座って下を向く。
やばいな、ほんと。
好きになっても、叶わないのに。
私なんかに好かれても迷惑なだけなのに。
櫂を好きだと気づいたのはいつだろう。
何度諦めようと心に誓っただろう。
その度に出来なくて苦しくなる。
諦めないと。
私に恋なんて無縁なんだから。
「髪」
「え?」
「もう伸ばさないの?」
「あー、もうショートに慣れちゃったから」
「そうなんだ。小学生の時めっちゃ長かったじゃん」
「長い方が好きなの?櫂の好み?」
「別に。ただ、長くても短くても叶絵なら似合うなって」
どうしてそんな嬉しい事を言ってくれるんだろうか。
これだから諦められないんだ。
「二人で何の話してるの?」
莉乃と郁人が私達の前に立つ。
それから私達は首を振った。
「なんでもない」
「そう?じゃあ、郁人と櫂が私と叶絵を呼び出した理由聞かせて」
莉乃の言葉に郁人がニコニコしながら口を開いた。
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