放課後

14/17

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
私なんて、悪影響な存在なのに。 どうして皆そんなに優しくしてくれるの? 何だか泣きそうになる。 何も言ってこない永草くんの優しさも、何度も電話をかけてくれる莉乃達の優しさも、全部が苦しくて。 私、何やってるんだろうって。 「馬鹿だよね、ほんと」 「叶絵ちゃんは馬鹿じゃないよ」 「え?」 「自分を守るためにしてるだけだから。自分を守って、それが相手を守る事に繋がるって知ってるから逃げるわけでしょ?そうやって考えられる人は馬鹿とは言わない」 「永草くん……」 「幼馴染から逃げたい時、俺が逃げ場になるよ。寂しいなら話し相手になれる。叶絵ちゃんが助けを求めてるなら助ける。だって俺は叶絵ちゃんの友達でしょ?俺を、逃げ道にしていいよ」 「何それ。……ありがとう」 永草くんと一緒に笑って、私はスマホに手を伸ばした。 莉乃に返事を返して立ち上がる。 「私、帰るね」 「うん」 「ありがとう、永草くん。おかげで少し軽くなった」 「それは良かった」 永草くんはひらひらと手を振って見送ってくれた。 本当に不思議な男の子。 何があったのか聞かなかったな。 私の過去を知りたがるような素振りも無かった。 一緒にいて楽だった。 私の頑張りを認めてくれているみたいで、心地よかった。 下駄箱で靴を履き替えていると莉乃が前から全速力で走ってきた。 そしてそのままの勢いで私に抱き着く。 「叶絵!!」 「痛い」 「心配したんだから!!何も言わずに消えるのやめて!!心臓に悪い!!」 「ごめん。スマホの電源切ってて」 「なんで切るの!?常に私の動向チェックしといて!!」 「そんなストーカーみたいな事してないから。ていうか、動きにくいから離れて」 莉乃を引き離すと不満気な顔で私を見る。 郁人も櫂も歩いて私の前に来ると楽しそうに笑った。 「叶絵の事だから先に帰ったのかと思ったけど、靴もあったしまだ学校にいるんだろうなって。探したんだけど見つからなかった。どこにいたの?」 郁人の言葉に少し考えて、それから頭に永草くんが浮かんだ。 「……秘密」 「何それ!!意味深!!」 莉乃達には申し訳ないけど、なんだか永草くんと二人の秘密にしておきたかった。 あの場所を、誰にも知られたくないような不思議な気持ち。 図書室なんて誰でも利用できるのに。 「言ったら一人の時間無くなるし」 「なんで叶絵そんな寂しい事言うのー!!」 「はいはい、莉乃。叶絵が困ってるから」 郁人が莉乃をなだめる。 私はため息をついた。 ・
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加