30人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
私なんて、悪影響な存在なのに。
どうして皆そんなに優しくしてくれるの?
何だか泣きそうになる。
何も言ってこない永草くんの優しさも、何度も電話をかけてくれる莉乃達の優しさも、全部が苦しくて。
私、何やってるんだろうって。
「馬鹿だよね、ほんと」
「叶絵ちゃんは馬鹿じゃないよ」
「え?」
「自分を守るためにしてるだけだから。自分を守って、それが相手を守る事に繋がるって知ってるから逃げるわけでしょ?そうやって考えられる人は馬鹿とは言わない」
「永草くん……」
「幼馴染から逃げたい時、俺が逃げ場になるよ。寂しいなら話し相手になれる。叶絵ちゃんが助けを求めてるなら助ける。だって俺は叶絵ちゃんの友達でしょ?俺を、逃げ道にしていいよ」
「何それ。……ありがとう」
永草くんと一緒に笑って、私はスマホに手を伸ばした。
莉乃に返事を返して立ち上がる。
「私、帰るね」
「うん」
「ありがとう、永草くん。おかげで少し軽くなった」
「それは良かった」
永草くんはひらひらと手を振って見送ってくれた。
本当に不思議な男の子。
何があったのか聞かなかったな。
私の過去を知りたがるような素振りも無かった。
一緒にいて楽だった。
私の頑張りを認めてくれているみたいで、心地よかった。
下駄箱で靴を履き替えていると莉乃が前から全速力で走ってきた。
そしてそのままの勢いで私に抱き着く。
「叶絵!!」
「痛い」
「心配したんだから!!何も言わずに消えるのやめて!!心臓に悪い!!」
「ごめん。スマホの電源切ってて」
「なんで切るの!?常に私の動向チェックしといて!!」
「そんなストーカーみたいな事してないから。ていうか、動きにくいから離れて」
莉乃を引き離すと不満気な顔で私を見る。
郁人も櫂も歩いて私の前に来ると楽しそうに笑った。
「叶絵の事だから先に帰ったのかと思ったけど、靴もあったしまだ学校にいるんだろうなって。探したんだけど見つからなかった。どこにいたの?」
郁人の言葉に少し考えて、それから頭に永草くんが浮かんだ。
「……秘密」
「何それ!!意味深!!」
莉乃達には申し訳ないけど、なんだか永草くんと二人の秘密にしておきたかった。
あの場所を、誰にも知られたくないような不思議な気持ち。
図書室なんて誰でも利用できるのに。
「言ったら一人の時間無くなるし」
「なんで叶絵そんな寂しい事言うのー!!」
「はいはい、莉乃。叶絵が困ってるから」
郁人が莉乃をなだめる。
私はため息をついた。
・
最初のコメントを投稿しよう!