放課後

16/17

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「あれ?」 櫂が不思議そうに私に近づく。 そして凄く近くで私の目を見てきた。 「な、なに……」 「なんか叶絵、いい匂いする」 近い 近い 近い!! そんな猫みたいな擦り寄り方しないで!! 「り、莉乃が友達にコロン貰ったって……っ」 「へぇ……叶絵がつけてるからかな。めちゃくちゃいい匂いに感じる」 その言い方は勘違いするから…っ。 櫂と見つめ合う形になっていると後ろに誰かが立った。 「はい、近いよ」 私と櫂を離したのは郁人だった。 櫂は特に気にした様子もなく郁人を見た。 「飯、出来たの?」 「もうすぐ出来るから待って。その間に叶絵の事襲っていいわけじゃないからね」 「襲ってない。いい匂いするから近づいただけ」 「それは周りから見たら襲ってるって事になるの。叶絵と付き合ってるならまだしも」 郁人の言葉に不満そうな櫂。 凄いドキドキしてる……。 私のつけてるコロンよりも、櫂の匂いの方がずっといい匂いだった。 同じ洗剤使ってるし、同じシャンプー使ってるし、私と何も変わってないのに。 ドキドキしながら深呼吸をする。 私は郁人を見て口パクで『ありがとう』と伝えた。 あのままだったら絶対に気絶してた。 櫂って本当に何をしてくるか予想できないから困る。 皆でご飯を食べている間も櫂の事は全然見れなかった。 本当に、どうしてこう人をドキドキさせるのが上手いんだろう櫂って。 私は平静を装いながら莉乃達の会話を聞いていた。 次の日。 いつもと同じように学校を過ごして、私は櫂と一緒に水族館へ向かった。 莉乃と郁人には黙ってたけど、絶対に郁人気づいてた……。 今日だって何度ニヤニヤされたか。 「うわ……莉乃から鬼のようにラインきてる」 櫂はめんどくさそうにそう言って返事もせずにスマホを仕舞った。 私もスマホを確認したけど、郁人は全くラインしてきてない。 本当に鋭い……。 水族館に着いて中に入ると、入り口付近に小さな魚がいた。 「可愛い……」 あの時は全く思えなかったけど、今は自然とそう思える。 「私、一人暮らししたら熱帯魚とか飼いたかったんだ。熱帯魚じゃなくても金魚とか小さな魚」 「なんで?」 「魚ってさ、見てると落ち着くって感じで。一人になってしまう寂しさを埋めようとしてたのかも」 そう言うと櫂は少し考えた。 「じゃあ、今度一緒に金魚でも買いに行こっか」 「え?でも、今は櫂達が一緒に……」 「それでも。叶絵が飼いたいって思ったんなら俺も飼いたい」 そう言って自然と手を繋がれた。 なんでそんな、優しい事言ってくれるの? 櫂はいつもそう。 私をいつだって甘やかしてくれる、優しくしてくれる。 お父さんが死んでしまって八つ当たりした私の事、簡単に許してくれた。 ・
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加