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『私の気持ちなんて櫂には絶対に分からない!!』
『でも俺は今叶絵が寂しいって思ってるって分かるから。だから絶対に一人にしたくない』
私がいくら傷つけても絶対に櫂は私を離さなかった。
私の手を掴んで、一人にならないようにいつだって側に居た。
そんな優しい櫂だから好きになった。
「ありがとう」
素直にお礼を言うと櫂がふわっと微笑んだ。
櫂と一緒に写真を撮って、一緒にお揃いのカワウソのストラップを買ってカバンに付けて、本当に付き合ってるみたいな錯覚をしてしまいそうに幸せな時間。
櫂の彼女になれる子は幸せだろうな。
絶対に幸せにしてくれるから。
大きな水槽の前に来ると私と櫂は椅子に座った。
小さな頃の約束を今でも覚えてくれている。
私を一人にしないって約束を守ろうとしてくれてる。
もういいのに。
私と関わると不幸になっていくのに。
頭では分かってるのに強く引き離せないのは私が櫂を好きだから。
離れてほしくないって自分勝手な思いのせい。
「綺麗だね」
「この水族館に初めて来たのに、この大きな水槽はどこでも一緒に見える」
「圧倒されるよね」
「本当に」
周りに家族連れやカップルがいる。
私と櫂は周りからどう思われてるんだろう。
相変わらず櫂は周りの女子を無自覚に魅了してるけど。
「そろそろ帰るか。叶絵の事拉致してたら莉乃が騒ぎ出す」
「あはは、お姉ちゃんだからね」
「これから時間あるときは一緒にどっか行くか」
「え?」
櫂の提案に驚く。
櫂は私の手を掴んだまま歩いている。
「俺に叶絵を一人占めする時間、頂戴」
そんな嬉しい事をなんで言ってくれるの?
ねぇ、櫂。
これ以上好きにさせないで。
呪われた私には、櫂はあまりにも眩しすぎる。
好きが溜まっていくだけで、とっても苦しいから。
私は赤い顔を隠すように俯いた。
それから小さな声で「うん……」と言った。
~放課後~
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