優等生と劣等生

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「莉乃と叶絵は高校どこに行くの?」 そう言えば皆でそんな話をした事なかったな。 だから私は楽に高校を選べた。 3人が絶対に選ばないであろう学校なんて簡単に見つける事が出来たから。 「なんでそんな事聞くの?」 私が郁人を見ると郁人は私に微笑んだ。 何……その微笑み……。 それからハッとした。 ちょっと待って、有り得ない。 そんな事、絶対に……。 「もしかして……」 「高校に行ってもよろしくね」 郁人にそう言われて莉乃と櫂を見る。 2人も私を見ていた。 嫌な汗が流れる。 なんで……どうして……。 3人なら進学校にだって行けるだろう。 何不自由なく、いい大学にだって進学して、皆が羨むような家庭を持って……。 それなのに、それら全てを棒に振るって事? 「なんで……っ」 理解が追いつかない。 意味がわからない。 「考え直して!!今からでも間に合う……」 「間に合わないだろ、どう考えても」 隣から櫂に手を掴まれる。 確かに今は2月。 卒業までもうすぐで、卒業式の後には一般入試がある。 志望校を変えることなんて不可能だ。 それでもダメだ。 3人を、私の道に引きずり込むのは。 「分かってて言ってるの!?私はわざわざ電車で30分もかかるような偏差値の低い学校に行くんだよ!?この近くには有名な進学校だってあって、3人なら余裕で入学出来る所があるのに!!なんで!?」 「僕らはいつも一緒だからだよ」 郁人の言葉に目を見開く。 「絶対に叶絵を1人にしないって約束したでしょ」 「郁人……」 「そうだよ。叶絵、私のお母さんが私が小さい時に病気で死んじゃって、顔も覚えてないって話した時に約束してくれたじゃん。『莉乃が莉乃のお母さんとするはずだった事、全部一緒にやろう』って。だから私も約束したんだよ。『絶対に叶絵を離さない』って」 「莉乃……」 「『私を置いていかないで』って、泣きながらお前の父親の写真に向かって言ってただろうが。俺たちは絶対にお前の事置いていかないって、そう何度も約束したはずだけど」 「櫂……」 「俺らの事、信じられないわけ?」 「ち、違う!!そうじゃない……そうじゃないけど……っ」 このまま3人の人生を狂わせていいの? そんなの許されるの? 私と一緒に居ることは、いい事なの? 「……後悔しても知らないから」 そう言って俯く。 だけど本当はとても嬉しかった。 3人が私と一緒に居てくれるという事が。 .
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