相合傘

2/15

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
この学校では6月になると『梅雨祭り』という謎のお祭りがある。 校内でされる6月の文化祭のようなものだ。 その実行委員に、くじ引きで私が選ばれてしまった。 相方はあまり関りのない男の子。 ただのクラスメイトで、数回話したことがあるくらいの男の子だ。 ウチのクラスは音声とモニターを使った『聴くお化け屋敷』をすることになった。 「怖い話って嫌いなんだよね」 波音が憂鬱にそう言うと萌音も同意したように頷いた。 「萌音も!ホラー映画とか、何のためにあるのか理解できない!」 萌音の言葉に麻里奈が笑った。 「私は好きだな」 「まりりん凄い」 「麻里奈ってホラー好きなの?意外だねー」 「萌音ちゃんも波音ちゃんも、案外ホラー映画って怖くないよ?怖いって思うから怖くなるんだよ」 「それはホラーが苦手じゃない人の意見だからー」 萌音が麻里奈に対して頬を膨らませる。 「怖い話を一人一つ書くことって……。先生も鬼畜だよね」 波音が目の前の紙を見つめてため息をついた。 私も紙を見つめる。 怖い話なんて思いつかないな。 特別幽霊が怖いわけでも、ホラーなものが苦手なわけでもないけど。 自分で体験した事もないし。 そう思いながら私はお父さんの事を思い出した。 そういえば昔、お父さんが怖い話って言いながら話してくれた事あるな。 あの時も怖がらなくてお父さん困ってたっけ。 「そういえば麻里奈。永草くんとこの間一緒に帰ったって?」 波音がそう言うと麻里奈が赤くなった。 「あ、あれは偶然……っ」 「偶然でも良かったじゃん」 「叶絵ちゃん達が私を仲間に入れてくれたから、永草くんと話す機会が増えただけで……。叶絵ちゃん達のおかげ」 「麻里奈、最近可愛くなったしねー。永草くんも麻里奈の事気になってるのかもしれないよー?」 ニヤニヤしながら波音が麻里奈をこつく。 麻里奈は幸せそうに笑った。 恋してる女の子って本当に可愛いな。 波音達のやり取りに微笑ましさを感じる。 「叶絵」 郁人が私を呼ぶ。 私も郁人を見ると郁人は笑顔で口を開いた。 「今日って叶絵、先生に梅雨祭りの事で残ってほしいって言われてたよね?」 「うん。だから今日は先に帰ってて」 「分かった。待ってなくて大丈夫?」 「大丈夫。何時になるか分からないから」 「遅くなったら連絡してね」 「お母さんか」 私達の会話に笑う3人。 郁人は永草くんと福永くんの所へ戻った。 ・
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加