30人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
放課後。
私の事を待ってると言い張る櫂の事を連れて郁人と莉乃が帰って行った。
私は先生に呼び出されてクラスの男の子と一緒に職員室へ向かった。
日常的な会話しかしない関係の私達に当然会話なんてものはなくて。
一言二言会話するていどで職員室についた。
先生は私達に梅雨祭りでする出し物について、クラスメイトから集めた怖い話をまとめるように言ってきた。
全員分を見ないといけないのか……。
ぼんやりとそんなことを考えながら職員室をあとにする。
すると男の子がため息をついた。
「どうかした?」
「あ、ごめん」
「別にいいけど……」
「俺、バイトあるからクラスメイト全員の話に目を通す余裕ないなって思って」
「あー……」
「でも茅ヶ崎さんにだけ負担かけたくないし。しばらくバイト休むかなって考えてて」
「学校行事の準備でバイト休むこともないんじゃない?」
「え?でもそしたら……」
「私がやれることは私がやるよ。バイトの合間にでも出来そうな事をやってくれたらいいから」
「そんなの茅ヶ崎さんの仕事量多くない?」
「私はバイトしてないし、時間は私の方があるから心配しないで。今からだってバイトなんでしょ?遅くなる前に行った方がいいよ」
「ありがとう、茅ヶ崎さん」
「ううん。無理そうなら頼むからお礼はいいよ」
「あはは、助かる。それじゃ、俺の連絡先教えとくから何かあったらラインちょうだい」
私は男の子と連絡先を交換して別れた。
スマホに『磯崎』と表示されたのを確認して私はスマホをポケットに仕舞った。
教室でクラスメイト達から集めた怖い話の書かれた紙を見て息をつく。
私には読んでても、一体何が怖いのか分からない。
本当に体験したのか、それとも作り話なのか。
怖く書こうとしているのが丸わかりで面白くないと感じてしまう。
……そういえば、今って一人なんだっけ。
静かな教室を見渡す。
グラウンドからは部活をしている生徒たちの声が聞こえてくるだけ。
なんだか久しぶりに一人になった気がする。
人を不幸にしか出来ないと言われている私が、一人になれないなんて。
幼馴染はもちろん、波音達も人がいいな。
自分から一人になろうとしてないのに一人になれるなんて珍しい。
……実行委員になれてよかったかもしれない。
そんな事を考えていると、雨が降り始めた。
あ、雨。
傘持って来てないや。
やむまで学校に居ようかな。
それともこのまま今日は学校に居たままじゃダメかな。
帰りたくないわけじゃない。
でも、帰ったら幼馴染達の温かさに安心してしまう。
それじゃダメだ。
『帰りたい』なんて思ってはいけない。
役立たずの、出来損ない。
人を不幸にしか出来ない、可愛くない呪いの子。
櫂達を、傷つけたくない。
不幸にしたくないし、悲しませたくない。
大事な幼馴染達の大事な人達を巻き込む前に、私は……。
「あれ?」
・
最初のコメントを投稿しよう!