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教室の入口から声が聞こえて振り返る。
そこには道宮さんがいた。
なんでこの子が……。
「叶絵ちゃん、どうしたの?」
人懐っこい笑顔で近づいてくる道宮さん。
私は道宮さんを見つめて口を開いた。
「実行委員で残ってて。そしたら雨が降り始めたから雨宿りしてるの」
「今日降るなんて天気予報言ってなかったのにねー。私も傘忘れたから残ってるんだ。ちなみに私も梅雨祭りの実行委員だよ」
嫌味がなくて話しやすい子。
莉乃が懐くの分かるな。
「実行委員って、道宮さん1人?もう1人はどうしたの?」
「相方は傘持ってたから彼女と帰って行った。私にも彼氏居たら迎えに来てくれるのになー」
「彼氏いないの?」
「いるわけないよ。私、モテないし」
そんな事ないだろう。
彼女はとても魅力的だ。
きっと誰彼なしに話しかけて友達になる。
そんな彼女に惹かれる男の子だっているだろう。
「そうだ、叶絵ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど、聞いてくれない?」
そう言いながら道宮さんは私の前に立って両手を合わせた。
「お願い?」
「そう。実は私達のクラス、『執事&メイド喫茶』をやるんだけど、西村くんが執事服着るの嫌がって」
「あー……」
櫂なら嫌がるだろう。
何よりも面倒なことが嫌いな人だから。
中学でも修学旅行で私服姿の櫂を見て女の子達が騒いでたのを見てめっちゃ不機嫌だったし。
あとから呼び出しフィーバーくらって本気で拗ねてたのを思い出す。
「絶対西村くんは裏方にはさせたくなくて、どうにかして着てもらいたいんだけど……。私らクラスメイトの話は一向に聞かなくて。莉乃に聞いたら『叶絵なら何とかなるかも』って」
なんでそうなる。
ここには居ない莉乃を恨めしく思いながらため息をつく。
櫂が私がお願いしたところで聞くとは思えない。
道宮さんが言って無理なら無理なのでは?
「……一応、言ってはみるけど期待はしないでね」
「ありがとう!」
私の両手を掴んで上下にブンブン揺らす。
この人本当に人見知りしないな。
「ホントに助かる。西村くん、いつも寝てるし話しかけられなくて。西村くんの友達がお願いしても聞く耳持たなくて」
「そんな人にどうやってやる気になってもらえばいいの?」
「莉乃が言うには、西村くんは叶絵ちゃんの言葉は100パーセント聞くって」
「いや、そんなわけないから」
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