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ため息をついて窓の外を見つめる。
何故か道宮さんは立ち去らずに私の前の席に座った。
「莉乃から聞いてて、私ずっと叶絵ちゃんと話してみたいなーって思ってたんだ。学校内でも美人って噂の叶絵ちゃんってどんな子だろうって」
「別に。普通だと思うけど」
「普通じゃないよ!なんて言うか……こう、オーラ?みたいなのが違うし」
「オーラ……」
「梅雨祭りも叶絵ちゃん狙いの男子が大勢いるかもよ?」
「狙われても困る」
「だって梅雨祭りには『相合傘のジンクス』ってのがあるみたいだし」
「相合傘のジンクス?」
初めて聞く言葉に首を傾げる。
道宮さんは笑顔で答えてくれた。
「梅雨祭りって毎年必ず雨が降るんだって。だから毎年生徒全員に傘が配られるみたい。好きな人と相合傘出来たら、その人と付き合えるってジンクス」
「ありきたりな話だね。そもそも、好きでもない相手と相合傘なんてしないでしょ」
「まぁ、その通りなんだけどねー」
楽しそうに笑う道宮さん。
この子が友達多いの納得。
私相手でも全然会話が途切れないなんて。
道宮さんがずっと話している間、私はずっと降り続く雨を見つめていた。
遠くで雷の音がする。
よく雷の音を聞きながら親戚達に閉じ込められたな、なんて考えていた。
昔は凄く怖かったけど、感情を殺してしまえば何も怖くなかった。
一翔に昔そう言ったら、一翔は凄く苦々しい顔で話を聞いてくれていた。
ぼんやりとそんな事を考えていると道宮さんがスマホを見た。
「あれ?西村くん?」
櫂の名前を呼んだ事にピクっと反応する。
道宮さんは私の前で電話に出た。
「どうしたの?……うん、うん。え?心配してくれてるの?西村くんが?うわ、珍しい」
楽しそうに櫂と話している道宮さんにモヤモヤした感情が浮かんでしまう。
私の彼氏じゃない。
それなのに、どうして櫂は私に電話をくれなくて道宮さんに電話したの?なんて小さな嫉妬が芽生えて。
道宮さんを心配してる事に凄く嫌な気持ちになって。
なぜだかその場に居たくなくて私はカバンを持って立ち上がった。
「あれ?叶絵ちゃん?」
道宮さんが私を呼ぶ。
私は立ち止まって、それから道宮さんに頭を軽く下げて教室を出た。
ムカムカする、イライラする、モヤモヤする。
感情がわけがわからない。
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