相合傘

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梅雨祭り本番。 私は受付に郁人と座っていた。 「櫂がアルバイト始めたって聞いて驚いたね」 郁人はそう言いながら笑う。 最近、櫂はアルバイトを始めた。 道宮さんに誘われて道宮さんと同じアルバイト先で働き始めたそうだ。 人手不足で困っていたと道宮さんは言っていた。 また、櫂と道宮さんが仲良くなったと考えたら胃が痛くなった。 「……そうだね」 「僕もアルバイトしてみようかな。いつまでも居候してるわけにもいかないし」 「私も探さないと」 「でも叶絵の親戚の人が大家さんなんでしょ?叶絵はいいんじゃないの?」 「そうはいかない。私はたくさんその親戚に助けられてるし、これ以上迷惑かけたくない」 「そっか。一緒に探そうね」 呑気にそう言いながら受付を進めていく。 私たちのクラスの聴くお化け屋敷は大盛況だ。 「そういえば、櫂が執事服着るって言って良かったね」 「ああ……」 道宮さんからのお願いを聞いてしまったので、私は櫂にお願いしてみた。 『櫂の執事姿見たいな』 少し本気でそう思ったから言っただけなんだけど、櫂は意外とあっさり了承したのだ。 私が頼んだからではないだろうけど、それでも嬉しかった。 休憩時間になったら行ってみようかな。 「もうすぐ叶絵休憩時間じゃない?麻里奈ちゃん待ってるかもしれないし、少し早いけど行ったら?」 「でも郁人が……」 「僕はいいから。すぐに代わりの子来てくれるから安心して」 そう言われて私は少し早めの休憩を取る事にした。 麻里奈を呼ぼうと裏方に行く。 麻里奈は私を見つけてクラスの子に手を振って私に近寄ってきた。 「少し早いけど休憩行っていいって」 「私もそう言ってくれたよ」 「すっかり麻里奈、クラスの子と仲良くなったね」 「叶絵ちゃんのおかげだよ」 「私は何もしてない。麻里奈の頑張りのおかげ」 そう言うと嬉しそうに麻里奈は笑った。 「叶絵ちゃん、行きたい場所ある?」 「一組に行きたい」 「それって、叶絵ちゃんと郁人くんの幼馴染さんがしてる執事&メイド喫茶?」 「そう」 「私も行きたいなって思ってたんだ!行こう!」 楽しそうに目を輝かせる麻里奈を可愛いと思いながら歩く。 目的地にはたくさんの人がいた。 一般の人も来てるからか、他校生達が多いように思える。 わーきゃー言ってるのは多分櫂と莉乃の事だろう。 昔からそうだったから。 「凄い人だかりだね」 麻里奈が圧巻されたようにそう言う。 見慣れた光景に私は「そうだね」としか返せなかった。 ・
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