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何気なく外を見てみれば雨が降っている。
道宮さんが言っていたのは本当だったんだ。
外を歩いている人達は学校で配られた傘をさして歩いている。
……梅雨祭りで相合傘が出来たらってジンクス、ちょっと気になるな。
ありきたりなジンクス。
それでも頭に浮かぶのは櫂だった。
「あ!叶絵!」
莉乃が私を見つけて駆け寄ってくる。
メイド姿の莉乃はとても可愛かった。
「来てくれたの?」
「うん」
「嬉しい!今ちょっと席が埋まってて案内出来ないんだけど、ちょっと待ってて」
莉乃はそういうとクラスの子に何か言って笑顔で戻ってきた。
「こっち来て!」
私と麻里奈を案内してくれた場所は道具などを置いている隣の教室だった。
そこに二つほど置かれているテーブルの一つに私と麻里奈を案内してくれた。
「ここ、知り合い用の場所なんだ。外からもお客さん来るし、満席だったら案内出来ないじゃんって海梨ちゃんが提案してくれて」
道宮さんが……。
本当に、どうしても憎めない女の子だ。
いっそ、ものすごく悪い子だったらよかったのに。
「何にする?」
メニューを渡されて麻里奈と見る。
可愛い物好きの麻里奈は目を輝かせていた。
「これ、可愛い」
「猫型のパンケーキ?」
「それ一番人気なんだよ!それにする?」
莉乃の言葉に頷く麻里奈。
私はアイスコーヒーを頼んだ。
莉乃が立ち去った後、麻里奈は息をついた。
「どうしたの?」
「あんなに可愛い子が近くにいたら緊張しちゃうんだよ。莉乃ちゃんって叶絵ちゃんの幼馴染で、お姉ちゃんなんだっけ?」
「うん」
「近くに来ただけでいい匂いした。かわいい子ってどうしてあんなにいい匂いなんだろう」
「莉乃がいつもつけてるハンドクリームの匂いじゃない?」
「そうなのかなー」
ため息の様な息をつく麻里奈に笑う。
それから麻里奈が椅子に座り直した。
「あのね、叶絵ちゃん」
「何?」
「私、今日頑張って永草くんを次の休憩の時に誘おうと思ってるの」
「いいじゃん、頑張って」
「うん。最近、私にも永草くんよく話しかけてくれるんだ。一緒に帰る事も多くなってすごく嬉しい。……でも」
急に暗くなる麻里奈に首を傾げる。
「でも?」
「バンドしてるでしょ?ファンの子とかに話しかけられてるのをよく見るんだ。私に対してと同じような対応をしてる永草くんを見てショックなのか何なのか分からないんだけど、その度に私嫉妬しちゃって。
彼女でもないくせにバカみたいでしょ?付き合えるとか今の時点で思ってないし、永草くんが私を好きになってくれるかも有りえない話みたいだし。
特別になりたいって願ってる自分がとても気持ち悪く思えて、なんだか上手く話せないの」
麻里奈の考えはとてもよく分かる。
でも、永草くんは櫂じゃないし、麻里奈は私じゃない。
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