相合傘

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「嫉妬するのは、当たり前だよ。だって好きなんだから」 「叶絵ちゃん……」 「私だって嫉妬するし」 そう言って麻里奈に笑いかけると教室の扉が開いた。 莉乃かと思い見てみると、立っていたのは執事服姿の櫂だった。 一瞬、息をするのを忘れた。 あまりにも似合いすぎてて、あまりにもカッコよくて。 どうしよう どうしよう。 ドキドキして、固まって動けない。 「お待たせいたしました。こちら、猫パンケーキとアイスコーヒーでございます」 櫂が私の隣に立つ。 麻里奈はポカンと私と櫂を交互に見ていた。 「何?俺に見とれて声も出ない?」 フッと笑いながら櫂は私の顔を覗き込む。 麻里奈が一人悶えているのを目の端に捉えながらも私は動けなかった。 「叶絵が『見たい』って言うから着たんだけど。何か感想無いわけ?」 「感想……」 そんなの『カッコイイ』としか言いようがない。 似合いすぎてて何を言えば良いんだろう。 そのままを言ってしまったら、そんなの告白と同じだ。 私は気持ちを落ち着かせて口を開いた。 「馬子にも衣装……?」 「はっ倒すぞ」 櫂に頬をつねられる。 櫂はため息をついて私の頭をポンポンとした。 「まぁ、叶絵らしいか。俺戻るけど、他校の奴とか知らない奴に声かけられても絶対ついて行くなよ」 「子供じゃない」 「あと、今日絶対一緒に帰るぞ」 「なんで?」 「この間みたいな事になったら嫌だから」 この間って、ずぶ濡れで帰ろうとした時の事かな? あれは単に道宮さんと一緒に居るのが嫌だったからなんだけど……。 櫂は有無を言わさずに教室を出て行った。 麻里奈が興奮気味に私の腕を叩く。 「あ、あんなの、もう、好きじゃない……っ!?」 「何が?」 「西村くんが!叶絵ちゃんを!!」 「ええ?ないから」 「どうして!?あんなの付き合ってる人しかやらないよ!?」 「幼なじみだからでしょ」 「なんでも『幼なじみ』で片付けちゃダメだよ!」 麻里奈は膨れながら抗議してくる。 私は困りながらも心臓のバクバクを抑えようとした。 .
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