優等生と劣等生

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卒業まではいつもと変わらず平和で。 友達ともあと少しで離れ離れになる。 寂しく思いながらも不安は全く無かった。 家に帰れば今日もまた言われるんだろう。 『お前は莉乃にとって悪影響だ』って。 莉乃が私と同じ高校を選んだのが気に食わないのだろう。 どうしてお母さんは私の味方をしてくれないんだろう。 いつも黙って、私とあの人のやり取りを不安そうに見つめて。 お母さんの事は好きだよ。 だけど、あの人と一緒のお母さんは大嫌い。 「お母さん」 莉乃もあの人も居ないリビングで、お母さんに話しかける。 お母さんはいつものように笑いかけた。 「どうしたの?叶絵」 「私、高校入ったら一人暮らししたい」 「え……?」 固まるお母さん。 高校生で一人暮らしなんて難しいとは我ながら思う。 だけどこの家に居たくないのだ。 あの人から一刻も早く離れたいのだ。 「ちゃんとアルバイトする。お母さん達に迷惑かけない。偏差値低いし、留年する事はないから安心して」 「ちょっと待って、叶絵……」 「私は、この家には必要ないでしょ?」 そう言うと傷ついたような顔をお母さんはした。 「そんな顔しないで。あの人が求めてるのは莉乃のような優等生の子供とお母さん。私は必要ない。お母さんの事が嫌いになったわけじゃないよ。だけど、この家に私の居場所はどこにも無い」 「叶絵……っ」 「ちょっとだけ援助しては欲しいけど、ほとんどは自分でやるから。安心して」 そう言って笑うとお母さんは私を抱き締めた。 こうやって抱き締められたの、いつぶりだろう。 大好きな私のお母さん。 そんなお母さんをアイツは奪った。 許さないし許せない。 一生かけても好きになれない。 「そんな気持ちにさせてたなんて……。気づかなくてごめんね、叶絵」 「ううん、お母さんは何も悪くないよ」 「貴女はちゃんと私の子供だからね。私の大事な家族だからね」 「うん、分かってる」 「一人で頑張らせたりしないから」 「え?」 お母さんは私を離すと涙を拭ってスマホを手に取った。 それからどこかへ連絡をした。 しばらく話すと私の側へ戻って来た。 .
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