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梅雨祭りも終盤に差し掛かってきた。
私は少しだけ休憩をもらって一人で学校内を歩く。
「あ、茅ヶ崎さん!」
突然声をかけられて振り返る。
そこには磯崎くんが立っていた。
「先生から最終報告してくれって頼まれたんだ。また誰かから聞いたら教えて。俺行ってくるから」
「え?いいよ。今日ずっと磯崎くんに任せっきりだし」
「なんで?気にしないでよ。俺、今日までバイトとかでほとんど茅ヶ崎さんに任せっきりにしてたんだし、今日くらい働かないとクラス全員に恨まれる」
ケラケラと笑う磯崎くん。
それから爽やかに去って行った。
磯崎くんを見送ってから歩き出そうとすると、急に腕を引っ張られた。
驚いて腕を掴む人を見る。
その人は櫂だった。
凄く不機嫌な顔で私を見ている。
「櫂?」
「あれ、誰?」
「あれ?……ああ、磯崎くん?実行委員で同じクラスの子。最終報告しに行ってくれるって」
「ふーん」
楽しくなさそうな櫂。
それよりも、その執事服のままで休憩してるんだ。
当たり前かもしれないけど、この姿の櫂を今一人占め出来てるのが嬉しい。
「櫂、どうしてここに?」
「今休憩中。なんか知らない女に追い回されるから逃げてた」
「いつもの事じゃん」
「あと叶絵捜してた」
「なんで?」
「郁人に聞いたら休憩だって言われたから。叶絵と居たいって思って」
そう思ってくれて嬉しいな。
私も櫂と一緒に居たかった。
「あれー?イケメン執事さんいないんだけど」
「どこ行っちゃったんだろう」
女の子達の会話が聞こえて櫂が眉を寄せる。
私は櫂の手を引っ張って歩き出した。
「叶絵?」
「こっち来て」
櫂を外に連れ出して傘をさす。
雨がふってるからか人はとても少なかった。
人気のない場所まで櫂を連れて来て周りを見渡す。
女の子達は追い掛けて来ていなかった。
「ありがと、叶絵」
「ううん。私も追い掛けられたら嫌だし」
そう言ってハッとした。
今、私は櫂と相合傘をしている。
『好きな人と相合傘が出来たら付き合える』
今はそんなジンクスすら信じたくなる。
「……櫂」
「ん?」
「今日、呼び出されたりした?」
「声かけられたけど、クラスに迷惑かけたくないから断ったけど」
「そうなんだ……」
「叶絵は?」
「え?」
「呼び出しとかあったわけ?」
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