夏休み

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「私、バイト始める事にしたから」 皆でご飯を食べながら私は皆にそう伝えた。 郁人は固まり、莉乃は口を開けて箸を落とした。 櫂まで動きが止まった。 「何?私にバイト無理とか思ってる?」 「そうじゃないけど……。大丈夫?」 「何が?」 心配そうな郁人に首を傾げる。 「変な男とかに絡まれたりしない?」 「それは分からないけど……」 「叶絵は放っておくとすぐに変な男に絡まれるんだから、ちゃんと注意しないとダメだよ?」 お母さんのような事を言う郁人にため息をつく。 「平気。そんなの躱すから」 「でも……」 「櫂だってバイトしてるし、私もバイトして叔母さんに少しでも返さないとだし」 ずっとこのまま居候状態はさすがに気が引ける。 叔母さんが優しい人だと分かってても私が気にする。 私は皆の心配そうな顔を見て見ぬふりしながらご飯を食べた。 終業式も終わり、私たちの学校は夏休みに突入した。 夏休みの宿題、なんてものも多少あるし頑張らないといけない。 それに、せっかくの夏休みだ。 バイトしてお金を手に入れて、それで櫂と一緒にどこかへ行って遊べたら……なんて。 そんな事を少しばかり期待している。 私はバイト初日にバイト先で深呼吸をした。 私がバイト先として選んだのはコーヒースタンドだ。 実はここ、永草くんが紹介してくれたんだよね。 なんでも永草くんのバンドメンバーがバイトしてるって……。 私はスタッフルームに入って辺りを見渡した。 そこには数名の私と同じくらいの年齢の男女が話していた。 「あの……すみません」 そう声をかけると、お団子頭の可愛い女の子が振り向いた。 「あ!今日から入るって言ってた凛の友達!?」 凛って事は、この子が永草くんのバンドメンバー? 女の子は可愛い笑顔で私に近寄った。 「うわっ!凛の言った通り、超美人ちゃん!」 「どうも……」 「私、水野(みずの)(さくら)!よろしくね!」 「あ、私は茅ヶ崎叶絵です」 「敬語じゃなくていいよー。私達同じ歳だし、ここにいる人達も歳近いからタメ語で大丈夫!」 水野さんがそう言うと周りの人も笑顔で頷いた。 凄く仲がいいんだな。 私は少し微笑んで頷いた。 .
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