夏休み

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「あ、あのっ!叶絵ちゃんとは、どういった関係ですか!?」 「え?僕?僕は叶絵の幼なじみですけど……」 郁人がそう言うと水野さんは私の腕を引っ張って耳元で話し出した。 「あんなイケメンが幼馴染なの!?」 「郁人?うん」 「超ドタイプ……っ」 「え?」 水野さんは郁人を振り向くと笑顔で近付いた。 「あの、郁人くんはバイトとかしてるの?」 「まだバイト探し中で……」 「じゃあ叶絵ちゃんと一緒にここで働いたら!?」 「え?」 「まだバイト募集してるし!!人員不足だし!!郁人くん一緒だと嬉しいし!!」 興奮している水野さんに驚く郁人。 私はため息をついて頭をかいた。 「郁人、この人は水野桜さん。同じ歳で永草くんのバンド仲間」 そう紹介すると郁人が「ああ」と言った。 「僕は岸谷郁人です。凛くんと仲良くしてもらってます」 「同じ歳だから敬語いいよー!」 照れながら返答する水野さん。 郁人は本当に、行く先々で人を魅了するからタチが悪い。 こんなの莉乃に分かったら莉乃拗ねるな。 「叶絵と一緒のバイトか……。櫂に怒られそうだけど、変な人に絡まれ体質の叶絵も心配だし……」 「だから、そんな不幸体質になった覚えないってば」 郁人は少し考えると水野さんを見た。 「僕もここでバイトしたいな」 「郁人!?」 「もちろん!!是非!!」 目を輝かせる水野さん。 それから水野さんは店長の元へ走って行った。 店長に直談判して郁人は軽く面接をする事に。 そして、見事人を魅了する体質の郁人は合格になった。 水野さんと別れて郁人と一緒に帰り道を歩く。 「なんでバイトするなんて言ったの?」 「んー。単に叶絵が心配だったのと、バイト探すの面倒だったから。せっかく桜ちゃんが言ってくれてるんだから、ここでもいいかなって」 「莉乃に言ったら恨まれる……」 「なんで?」 「天然鈍感郁人は黙ってて」 「酷いなー。叶絵だって鈍感のくせに」 郁人が頬を膨らませる。 私は頭を抱えて歩いた。 .
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