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「本当に櫂は叶絵にはベタベタに甘いよねぇ」
「私と叶絵の扱いの違いが大きく違う点について!!」
「はいはい、莉乃。諦めようね」
「諦めようね!?」
怒ってる莉乃の頭をポンポンとする郁人。
莉乃は不貞腐れながら水を飲んだ。
運ばれてきた飲み物を飲みながら何気ない会話をする。
郁人はスマホを操作して画面を私と莉乃に見せた。
「あのさ、夏休み皆でどっか遊びに行かない?」
「大型ショッピングモール?」
「わー!ここ、観覧車とかVRで遊べる場所とか映画館とかあるところだ!行ってみたかったの!」
「バイト調整して、4人でどっか行けたらなって。せっかくの高校初の夏休みなんだし、楽しまないとね」
今まで三人を避け続けてきたけど、もうその必要はない。
いくら私が拒絶しようと、必ず三人は私を捕まえに来る。
不幸にするだけだって言われてきたけど、そんな事ないと三人が教えてくれた。
私は素直に頷いていた。
すると驚く二人。
「……何?」
「いや·····、まさか叶絵が頷くとは思ってなくて」
「いつもみたいに『三人で行けば?』とか言うんじゃないかって思ってた。そうなったら私、頷くまでどうしてやろうかと·····」
「別に、行きたいって思っただけだし。そんなに驚くなら行かない」
「え!?やだやだ!!そんな事言わないで!!」
莉乃が私の腕を掴んで私を見てくる。
私はため息をついた。
それからしばらくして櫂のバイト時間も終わり、私達は4人で帰る事に。
隣を歩いている櫂をチラッと見て、『私の歩くスピードに合わせて歩いてくれてる』という事に感動とトキメキを感じながら歩く。
サラッとそういう事が出来てしまうからイケメンだ。
「俺、来週だったら行けるかも」
「僕と叶絵も来週なら大丈夫だよね」
「莉乃は何もしてないんだし、いつでもいけるだろ」
「ちょっと櫂!私もバイト始めるんだから!」
「は?どこで?」
「駅前の本屋さん。この間面接して受かったんだ」
「本ぶちまけたり発注ミスしたりすんなよ」
「櫂、酷い!!」
むくれる莉乃をなだめる郁人。
それから郁人はスマホでカレンダーを確認した。
「じゃあ来週の火曜にしようか」
「別にいいよ」
「私もー!」
櫂と莉乃が賛成する中、私も頷いた。
マンションへ帰ると今日の食事当番である私と郁人は調理へ取り掛かった。
その最中、スマホにお母さんからのメッセージが表示される。
メッセージ内容にため息をついて、私はとりあえず無視した。
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