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「叶絵は何かしたい事ある?」
「特には……。適当に歩こうかなって思ってた。櫂は?やりたいことあるなら郁人と莉乃に合流しても……」
「叶絵一人に出来ねぇだろ」
ああ……本当に櫂は私を甘やかすなぁ。
それが嬉しくて、特別な感じがして、むずがゆくなる。
好きな人と二人で行動できる。
凄く嬉しいな。
「……櫂」
「何?」
「ワガママ、言ってもいい?」
「どうぞ」
「今日、手 繋いでてもいい?」
「……は?」
驚く櫂。
私は恥ずかしくなって俯いた。
「ご、ごめん。櫂の手って安心出来るから、繋いでくれると嬉しいなって思って……。気持ち悪かったよね?忘れて」
そう言うと櫂が私の手を握った。
それも、指と指が絡むような……恋人がするつなぎ方。
え……。
「別にいいよ、これくらい。気持ち悪くないし、こんなのワガママじゃないから。むしろ俺もこれで安心できるから」
「安心……?」
「そう。叶絵が、知らない男にジロジロ見られなくなる」
こ……この男は……っ!
赤くなると手を引かれて立ち上がる。
そのまま櫂は歩き出した。
「行きたい場所ないなら適当に歩こう。入りたい場所あったら言って」
私と櫂は付き合ってない。
それなのに、まるで付き合ってるみたいに接してくれるのはどうして?
幼馴染ってこんなに距離って近かったっけ?
それとも、櫂は誰にでも同じように出来るの?
私じゃなくて、道宮さんにだって……。
そう考えてハッとする。
そんな考えは不毛だ。
櫂は優しい、だから私のお願いを聞いてくれる。
それは他の人にだってそうだ。
私だけが特別じゃない。
櫂の特別になれるように私が頑張らないといけないんだ。
道宮さんよりも私を選んでもらえるように頑張って、櫂の一番になれるように。
「櫂、私 櫂と一緒にVRゲームしたい」
そう言って私達はVRの施設に向かった。
中には友達同士で来ていたり家族で来ていたり、恋人同士で来ていたり様々な人が溢れていた。
「何かいろんな種類あるけど、何がしたいの?」
「あのね、櫂。私が勝ったらお願いを聞いてほしいの」
「は?そんなの勝負しなくても聞くけど……」
「そ、それは違うの。お願いじゃなきゃ絶対にしてくれないようなお願いだから……」
「俺、何言われるわけ?」
「櫂が勝ったら私がお願い聞くから」
「お願い、ねぇ……。いいよ、別に。叶絵がそれでいいなら」
櫂の了承を得て、私達は勝負することになった。
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