夏休み

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VRの機械をつけてするシューティングゲーム。 前からゾンビが襲ってくるやつで、私はとにかく勝つために必死にゾンビを撃ちまくった。 そんな中…… 「ねぇ、あの人カッコ良くない?」 「機械つけてても分かるイケメン具合」 「ていうか、撃ち方さえもカッコいいとか」 櫂が人気なのが気になってしまう。 一体どんな撃ち方してるわけ? 機械をつけてて分からないけど、櫂は何をしても様になるしカッコいいから。 見たかったけど我慢するんだ。 そうして制限時間が過ぎると、タイムアップの文字が浮かんだ。 機械を外して得点を見ると、私は櫂に勝っていた。 勝った……のは、いいんだけど……。 どうして櫂の点数、そんなに低いの? 櫂は基本なんだって出来る。 それはもちろんゲームだって含まれる。 私はそれを知っていたから、このゲームを提案したのに。 「なんで……」 そう呟くと周りの人が小声で話しているのが聞こえた。 「いや、彼氏イケメンすぎだろ」 「あれ絶対彼女勝たせるためにやったよね?」 「じゃなきゃ、機械外して適当に撃つわけない」 機械を、外した? 衝撃的な言葉に驚いて櫂を見つめてしまう。 櫂はため息をつくと私の手を掴んでその場から離れた。 「か、櫂……今の……」 「本当だよ。俺が機械外したの」 「なんで……」 「だってそうでもしないと、俺が勝つじゃん」 「それなら私が櫂のお願い……」 「俺は叶絵のお願いを聞きたい。正直、勝負なんてしなくても叶絵が願うなら何だってしてやる。でも、勝負受けなきゃ絶対に叶絵は言わないし、この先だって絶対に言ってこないだろ?それじゃ意味ないんだよ」 櫂は立ち止まって私を振り向くと私の頬に手を滑らせた。 「叶絵のお願いって、何?」 そう聞かれて心臓が騒がしくなる。 私が櫂にしたかったお願い……。 ギュッと唇を噛んで、それからゆっくり口を開いた。 「……櫂の、今まで付き合ってきた彼女達みたいに…今日は接してほしいな、って……」 こんなの気持ち悪いって思われそうで、正直聞いてもらいたいけど言い出すのが怖かった。 だから勝負って事にして、勝ったら言う、負けたら一生言わないって決めた。 それなのに櫂は私の事なんて全てお見通しなのか、手を抜いてまで私のお願いを聞こうとした。 ズルいな……。 「叶絵を、今日は『彼女』って思って接すればいいわけ?」 「う、ん……。やっぱり気持ち悪いよね?このお願い、無かった事に……」 「悪いけど、絶対に無かった事にしないから」 「え……」 「今日だけじゃなくて、この先ずっと『彼女』にしたいくらい」 何を言われているのか分からない。 固まって動けずにいると櫂に引き寄せられた。 「これってさ、お前、俺の事『好き』って事でいいの?」 耳元で言われた言葉に赤くなる。 ドキドキして声が出てこない。 ・
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